社会・公共

企業知見 × 社会課題の化学反応を体感する。社会起業家と共に挑む1日限りの「戦略共創会議」レポート

2002年から24年間にわたり、「社会」という正解のない問いに向き合い、人々を巻き込みながら新しい価値を生み出し続けようと挑戦する起業家をサポートしてきた「社会起業塾イニシアティブ(以下、社会起業塾)」(運営:NPO法人ETIC.)。これまでに164名の社会起業家を輩出し、卒塾生の約88%が今もなお事業を継続しています。

そんな「社会起業塾」の中心にあるのは、企業と起業家が互いに影響し合い、共創を生み出す関係です。先日、2025年度のプログラムに参加する創業期/成長期のNPO・ソーシャルスタートアップ約25団体と、企業で働く人々が一堂に会し、社会課題の「解決の糸口」を共に探求する特別イベント「企業共創セッション」が開催されました。

社会格差、メンタルヘルス、障がい福祉、外国人共生、子育て・家族支援など、さまざまな現場で起業家が直面している「リアルな事業課題」に対して、「共に社会を創る仲間」としてフラットな雰囲気で学び合い、交流が生まれる場となりました。本記事では、その一部をレポートします。

社会の変化から新しく生まれた挑戦。企業知見 × 社会課題を深掘りする特別な1日

2025年より、パートナー企業やその他の企業社員の方々も巻き込みながら、企業と起業家による共創を加速するためにスタートした「企業共創セッション」。

この新しい挑戦の背景には、24年間の奮闘の先に生まれた「社会起業家が頑張るだけでは社会は変わらない」という深い実感や、営利企業も経営戦略上社会と関わる必然性が生まれるようになった時代の変化、日本社会における個人レベルでの社会課題への関心・意欲の高まりがあります。

そうした共創の機運が高まるなか、当日は32名の社会起業家と(参加団体詳細はこちらのページからご覧いただけます)、コンサル、IT、エネルギー、銀行、不動産、広告など多様な分野で活躍する29名の企業人が参加しました。

特別な専門性がなくても他者視点が悩みを解きほぐし、次の一歩を選び取ることを後押しする

まずは、一度限りのイベントでのつながりに終わらず、助け合える仲間との出会いのきっかけになるよう、起業家・企業人共に一人ひとりの自己紹介からスタート。この場にいる全員がお互いのことを知る時間を経てから、課題解決ワークショップを3回のラウンドに分けて行いました。

ワークショップは、問題をほぐす対話の手法として知られる「智慧の車座」形式で実施(※)。3〜6人で集まり、相談者が抱える悩みについて対話する過程で、相談者は視点が広がり問題の本質に気づいていきます。

一人で考えると堂々巡りになってしまうことや、客観的に捉えにくい悩みを他者の視点を借りることで解きほぐし、次の一歩を明確に本人が選び取ることを後押しすることを目的にしたワークショップです。

(※)出典:加藤雅則著「組織は変われるか――経営トップから始まる『組織開発』」

ワークショップの際に守る3つの基本スタンスも鍵になります
途中、相談者は輪から背を向けて座り、支援メンバーは無責任に、自由に、本人がいないかのように解決策を議論するという個性的な時間も設けられていました

支援する/されるアプローチからではなく、話を聴き合うことから始まる企業と社会起業家の新しい関係性

社会起業家から持ち込まれた相談事は、例えば下記のようなものたち。

  • 企業が対応しにくいイシューにおいて協働企業を増やすために、何ができるか?
  • 企業との関係性のあり方が、一方的ではなく共創の形になるにはどうしたらいい?
  • 組織内のミーティングで視座を揃えるには? 企業ではどんなミーティングをしているのか
  • どの成果を数字にして示すことができたら、社会からの信頼度が上がる?
  • 個人が、企業が、社会がそれぞれイシューに対してできることは何?
  • 事業のフィールドがこのままで適切なのか、ほかの可能性はあるのか
  • 年に数回の東京出張を、寄付・採用・仲間づくりにつながる“戦略的導線”にするには?
  • 新しい学校のかたちを一緒に考えたい
  • 世界中から日本にきた子どもたちが、日本で夢を持つことができる体験機会とは?
ワークショップはランチタイムを挟んで1日に渡り実施されました

それぞれの悩みに対して、相談者が抱える問題の本質を探す時間、解決策を話す時間、合わせて40分ほど対話の時間が持たれました。午前、午後とたっぷりの3タームを終えて、小規模自治体におけるインクルーシブなユースセンターモデルづくりに取り組む「NPO法人miraito」理事長・上田彩果さんからは、下記のような感想の声が届きました。

「都市の企業と地方のNPOのいい関係性とは何なのかというテーマで相談させていただきました。『いろんなつながりができるといいな』とは思っていたのですが、その解像度が低かったのだなと感じています。資金的なつながりなのか、一人の人間としての関係性なのか、専門家としてのつながりなのか──一度に全部は叶えられないので、今の団体のフェーズからもう一回どの優先順位でやっていくかを考えたいなと。miraitoは地方にあるので、応援はしていただけても身近にずっといてくださるわけじゃないから、『じゃあ何を?』という部分ですね。

あとは、一緒に考えてくださったという体験自体が大きな意味を持っているなと感じました。これまでずっと『うまく支援を引っ張り出さなきゃ』と思っていたのですが、『ご相談する段階から入っても全然大丈夫なのかもしれない』と、この場を通してはじめて思うことができました」

また、難民・移民のルーツをもつ子どもの日本語教室を運営する「認定NPO法人メタノイア」代表理事・山田拓路さんからは、下記のような感想が届きました。

「個人でマンスリー寄付者となってくれる方々が増えてきて、次は企業寄付に挑戦したいと考えていました。けれど経験がほぼなく、この場で相談したところ、まずは企業のCSR担当者にたくさん会って話をして、感触を掴んだりと、それぞれの企業との相性を探ることからスタートしたほうがいいのではという意見をいただきました。『どう寄付を集めるか?』より、まずは調査を先にするべきだと次の一歩が具体的になりました。

また、社内のCSR部門で社会課題を知る勉強会の場をすでにつくっている方が同じグループにいらっしゃって、そこに呼んでいただけるかもしれないことになったんです。もし叶ったら、より具体的な感触が得られる場につながりそうで、とてもありがたい時間でした」

企業の方々からも、

「フリースクールや難民支援などニュースでしか見ていなかった社会課題はあくまで全体概要でしかなく、深堀りするとまた違った課題があることに気づいた」

「ビジコンでの出会いなどとは違い、すでに行動されている方ばかりで伝わってくる情報のリアリティがあり、とても勉強になった」

「講演形式ではなく、少人数のワークショップ形式であることがとても良かった。お互いの気づきが生まれた」

「問題を深く知ることができたと同時に、自分もアクションを起こそうと思った」

などのコメントが届きました。

イベント終了後は、交流を深めるフリータイムと懇親会を開催。それぞれがネクストステップへつながるつながりをつくることができた、「企業共創セッション」となりました!

社会起業塾では、起業家と企業・市民をつなぎ社会をつくる取り組みを今後も継続していく予定です。3月17日(火)には、本イベントに参加した社会起業家が登壇する「2025年度 社会起業塾イニシアティブ DEMO DAY」も開催します。

孤独孤立、メンタルヘルス、多様な学び、インクルージョンなど、さまざまな社会課題に向き合ってきた起業家たちが、実践で感じた手応えや葛藤、そしてこれから描く未来を語る場です。さらに、「事業性と社会性の両立に挑む社会起業家と共に、企業と社会の『次の関係性』を考える」というテーマのもと、企業と起業家が共に問いを立て、次のアクションを考える時間もつくります。

2月の対話で生まれた、「もっと知りたい」「何かできるかも」という想いをさらに深める機会となるDEMO DAY。多くの方々にお会いできることを、楽しみにしています!

DEMO DAY詳細&お申込はこちらから:https://kigyoujyuku2026demoday.peatix.com/view

この記事を書いた人
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1986年生まれ。学術書出版社にて企画・編集職の経験を経てから、2015年よりDRIVE編集部の担当としてNPO法人ETIC.に参画。2018年よりフリーランス、また「ローカルベンチャーラボ」プログラム広報。

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