※本記事は寄稿記事です。
社会課題の最前線で活動するNPOは、限られた資源の中で日々挑戦を続けています。一方で、
「活動は意義深いのに、なぜか思うように広がらない」
「頑張っているのに成果につながらない」
といった悩みを抱える団体も少なくありません。
では、こうした状況ではどのような問題が起きているのでしょうか。そして、どのようにすれば改善できるのでしょうか。
私たち180 Degrees Consulting Tokyo(180DCT)は、これまで中小規模のNPOに対して無償のコンサルティング支援を行ってきました。2012年の設立以来、教育、国際協力、社会的養護、環境など多様な分野の団体を支援し、累計70件以上のプロジェクトを実施しています。
今回、これまでの支援の中でも比較的最近の55件のプロジェクト資料を横断分析しました。すると、分野や活動内容が異なる団体の間でも、一定の共通パターンとして見られるマネジメント上の課題があることが分かりました。
本記事では、その中でも特に多く見られた課題とそれに対する解決策、さらにNPO運営に関する実践的な示唆を紹介します。
55件の分析から見えた「3つの共通課題」
分析を通して見えてきたのは、NPOマネジメントにおける次の3つの課題でした。
- ボトルネックが特定されていない
- 組織目標が曖昧な状態で事業を進めている
- フィードバックの仕組みが整っていない
まず一つ目の課題から見ていきます。
1. ボトルネックが特定されていない
最も多く見られたのは、成果が出ない理由が特定されていないケースでした。
例えば、寄付を増やすためにクラウドファンディングを実施したり、新しい広報施策に取り組んだりする団体は多くあります。しかし、その施策がうまくいかないと、別の施策を試すという形で取り組みが続いていきます。
こうした場合、実際の問題は施策そのものではなく、その前段階にあることが多いです。
ある団体では、寄付を拡大するためにクラウドファンディングに取り組んでいました。しかし実際の課題は、寄付施策ではなく「支援者層(ファン)の不足」でした。
クラウドファンディングは、すでに団体を応援する人たちが存在してこそ成立しやすい施策です。その基盤が十分でない状態では、期待した成果が出にくくなります。
このように、課題の本質を見極めないまま施策を繰り返すと、「頑張っているのに成果が出ない」という状態が続いてしまいます。
重要なのは、アクションを増やすことではなく、「なぜうまくいかないのか」を分析する時間を確保することです。

2. 組織目標が曖昧な状態で事業を進めている
次に多く見られたのは、組織として目指す姿が十分に言語化されていないケースでした。
NPOでは日々の支援活動に追われ、組織の目標について、具体的な戦略に落とし込めるレベルまで十分に議論する時間を確保できないことがあります。しかし、目標が曖昧なままだと、さまざまな意思決定が難しくなります。
例えば、「活動規模をどこまで広げるのか」「支援対象をどの程度増やすのか」「資金調達はどの程度必要なのか」といった判断ができなくなります。
ある団体では、支援人数を増やすのか、それとも一人ひとりへの支援の質を高めるのかといった方針が十分に定まっていませんでした。その結果、資金調達の目標設定が難しくなり、資金調達活動は総花的になり、戦略的・効果的な資金調達が進みにくい状況が生まれていました。

こうした状況を防ぐためには、組織の目標を具体的な言葉と数値で整理することが重要です。整理する際は、以下のような組織目標設定のワークシートを活用することがおすすめです。

3. フィードバックの仕組みが整っていない
次に多く見られたのは、データや振り返りの仕組みが整っていないケースです。例えば、ボランティア募集や寄付募集、イベント開催などの活動を行っていても、
- どの施策が効果的だったのか
- どこで参加者が減っているのか
といったデータが残っていないことがあります。こうした状況では、改善を進めようとしても、何を変えればよいのかを判断することができません。
データは自然に集まるものではなく、「何を知るために集めるのか」を設計する必要があります。
例えば寄付者との対話やアンケートなどを通じて、寄付の動機や団体の印象を聞くことで、支援者の行動を理解することができます。こうした情報を蓄積することで、団体独自の支援者ジャーニーが見えてきます。
NPO運営のエンジンは「ファン」
今回の分析に限らず、180 Degrees Consulting Tokyo(180DCT)はこれまで多くのNPOを支援する中で、成功している団体に共通する特徴を見出してきました。それは、団体の活動を支える多くの資源が「ファン」の存在から生まれているという点です。
NPOの活動は、寄付だけで成り立っているわけではありません。
団体を応援する人たちが、企業やメディアとのつながりを紹介し、情報を広めてくれます。
また、ボランティアとして関わる人が活動を支え、やがて職員や理事として団体の中核を担うようになることもあります。時には、支援者が会場や移動手段などを提供してくれることもあります。
このように見ていくと、NPOの運営に必要な「人・もの・機会」の多くは、団体に共感する人たちとの関係の中から生まれていると言えます。つまり、NPO運営のエンジンは、団体を応援する人たち――すなわち「ファン」の存在なのです。

SNSよりも「人づて」が効くことも
興味深い結果として、ボランティア参加のきっかけを調べた調査では、最も多かったのは「知人からの紹介」でした。
SNSをきっかけに活動を知る人もいますが、実際に参加する段階では、人づての紹介が重要な役割を果たしています。
SNSは便利なツールですが、それだけで人が動くわけではありません。むしろ、既存メンバーのネットワークや紹介といったリファラル型の関係が、活動の広がりを支えているケースが多く見られました。

社会課題解決を支える強固なマネジメントへ
社会課題に取り組むNPOの活動は、決して簡単なものではありません。限られた資源の中で、日々の支援と組織運営の両方を担いながら、多くの団体が試行錯誤を重ねています。
今回の分析で整理した課題は、多くの団体が直面する構造的な問題でもあります。
こうした課題に向き合い、組織としての基盤を整えることは、社会課題解決につながっていくはずです。

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