
「個の意志に、組織の動力を。」
このテーマをもとに、2026年5月15日・16日、虎ノ門ヒルズフォーラムで「Beyondカンファレンス 2026」が開催されました。このイベントは多様なセクターによる共創事例を学び、社会課題をテーマに協働する仲間を見つける場所。
カンファレンス終了後、現場に参加した学生たちが集まり、イベントを通して感じたリアルな気づきや学びを語り合う「振り返り座談会」が行われました。この記事は、その座談会の様子をもとに、参加メンバーの一人である私(東京女子大学3年・松下琴羽)がレポートとしてまとめたものです。
座談会に参加した4人の学生は、全員がNPO法人ETIC.(以下、エティック)主催の「地域ベンチャー留学」経験者。
地域ベンチャー留学は、1カ月間地域に住み込んで、地域の中小企業の経営者の右腕として課題解決に挑む、実践型インターンシップです。
私自身も、宮城県石巻市や和歌山県田辺市でのインターンを通し、地域で挑戦をした経験から「共創」や「関係人口」というテーマに惹かれ、「視座が異なるセクターの関係性構築」「社会人の地域創生の向き合い方」について実例から学びたいと、Beyondカンファレンスへの参加を決めました。
今回は、振り返り座談会の中で私たち学生が自分ゴトとして向き合った「『あいだ』作戦会議─アカデミア・NPO・まちづくり会社・地方議員等多様な『あいだ』を繋ぐ人たち同士の繋がりを考える」セッションの様子を中心に深掘りします。

>> セッションの詳しい内容はこちらの記事をご覧ください。
<学生>
日胡(かこ)さん 日本大学 生物資源科学部2年
原 充希(はら みつき)さん 早稲田大学 商学部2年
細谷 鴻羽(ほそや こう)さん 明治大学 商学部3年
松下 琴羽(まつした ことは) 東京女子大学 現代教養学部3年
※記事中、一部敬称略
「地域と向き合う人が“出る杭は打たれる”現状から、出る杭を増やして打てない未来にしたい」(日胡/日本大学)

日胡さんは2025年8月、北海道函館市で地域ベンチャー留学に参加。その後は一般社団法人Local Revolutionでの長期インターン経験を経て、現在はエティックのローカルイノベーション事業部でインターン中です。
「北海道で地域と協働してきた経験のなかで『共創』の具体的なイメージがつかめず、言葉が一人歩きしているような違和感を感じていました。そこで今回のカンファレンスのテーマである『共創とは何か』を自分なりに噛み砕きたい、また、本イベント参加企業の方々がなぜ参加し、何をもって帰るのかを知りたくて参加を決めたんです。
『あいだ作戦会議』で私が参加したグループはあいだの人の仕事をプライシングし言語化するグループで、地域で活躍する社会人の方と議論をしました。
あいだに立つ存在は、コーディネーターのような特定の仕事をしている人だけでなく、日常生活や仕事をするなかで、実は誰もが気づかないうちにその立ち位置に立っています。
『あいだ』として複数のコミュニティに所属することは、他者からの見られ方を学ぶ機会です。また、多角的な評価が得られて、自己理解が深まります。議論を通して、地域と都市をつなげるあいだの人の存在価値を再確認できたことはとても良かったですね。
同時に、私は、企業人が自社の内側でも、まずは協働し、仲間をつくっていくことが大事なのではないかと感じています。そのため、企業ごとの現場の悩みを共有する場面では、上入佐慶太さん(株式会社JAL航空みらいラボ 航空事業調査研究部)の『出る杭でも出続ければ打たれなくなる』という言葉が特に印象に残っています。
『出る杭』である上入佐さんが、大企業に所属しながら、熱意をもち地域で成し遂げたいことに取り組むなかで直面した困難や葛藤の場面について、実体験を交えて共有してくださいました。その一方で、別のセッションでは、高橋博之さん(株式会社雨風太陽 代表取締役)が『1人で出続ける杭はつらいよね』というお話もされていました。
1人だけで頑張るのではなく『同じ志をもつ仲間=杭』を増やす。そして挑戦することが当たり前な空気を社内につくることが、共創を活性化させていくためにとても必要だと実感しましたね。
それは、私自身が大学内で新しい挑戦をしようとするなかで、少し『1人で出続ける杭』になりかけていて、葛藤やつらさを感じていた部分もあったからこそ、より胸をうたれました。
今後は、“自分の強み”に気づいている子も“自分らしさ”を見いだせず葛藤している子も、無理に答えを出すのではなく、一人ひとりが学びの目的を見いだせるよう「選択肢(余白)」を広げていきたいです。
将来は、こうした一人ひとりの選択肢を広げる視点を大切にしながら、1つの地域で地域コーディネーターとしての役割を担いたいと考えています。その時々に応じてさまざまなセクターの『あいだ』に立ち、そこで暮らす人々の誇りや愛着につながる地域づくりを目指します。これからも、地域内外に目を向け、地域づくりの学びを深めていきたいです」
「地域の中間支援者の役割が評価されて、透明化されない社会にしたい」(原充希/早稲田大学)

原充希さんは、高校2年生のときに奄美大島で地域ベンチャー留学に参加した経験を持つ現役の大学2年生です。地域ベンチャー留学に参加し、奄美大島に行ってからずっと抱えていた、あるモヤモヤがあったそうです。
「地域の魅力を、どうやって外の人たちに知ってもらうか。そして地域の人と外の人、あるいは異なる立場の人たちが協力するとき、その『あいだ』をどううまくつないでいけばいいのか。現地の人と違う立場として、視点の違いにモヤモヤしていました。この経験から、つなぎ手として、どううまく関係性をつくるのか、多様なセクター実例から学ぶためにカンファレンスに参加しました。
『あいだ会議』は、まさに僕が奄美で感じていた問題意識ととてもリンクしていましたね。
地域と外の人をつなぐ『あいだの人』は必要不可欠なのにも関わらず、その役割はソフトスキルが求められるため、契約書や見積書には表れないことで、マネタイズが難しい現状があります。
また、『つなぎ手は接着剤のようなもので、つなぐ瞬間は必要とされるけれど、一度コミュニティが固まるとその存在や苦労は透明化され、忘れ去られてしまう』というジレンマには深く共感しました。つなぐときには必要とされる一方で、一度くっついてコミュニティが形成されると、その存在や苦労は透明化され、忘れ去られてしまう構造的な課題があります。
そこで、大企業や大きな組織が関わるときほど、結果だけを見るのではなく、接着剤となる中間支援の人が現場に足を運び、ストーリーを共有し並走し続けることが重要です。
現段階ではあいだの人の価値がうまく評価される土壌が整っていませんが、Beyondカンファレンスのように立場を越えて対話していく環境が解決の一歩になりうると考えます。
登壇者の活躍をセッションを通してみると、今後どんなフィールドで働くとしても『人を巻き込む力』は必須だと感じました。自分が『この人を全力で応援したい、ついていきたい』と思える大人たちの共通点は、自らの想いやビジョンを徹底的に言語化できていることです。だからこそ、自分自身もビジョンや気持ちをしっかり言語化し、他者に伝える努力をしていきたいです」
「企業に所属しながら地域を舞台に熱中する社会人と出会い、キャリア観が変化した」(細谷鴻羽/明治大学)

細谷鴻羽さんは、大学2年生のときに北海道標津町で地域ベンチャー留学に参加したことで、関係人口の創出以前にまず『地域に来てもらうハードル』が想像以上にあることに気づきました。
「地域で活躍している組織や個人と、資本力をもつ組織がどのような関係構築をしているのか。カンファレンスのテーマである『個の意志に、組織の動力を。』という言葉に強く惹かれ、参加を決めました。
多様なセクターの経験談を知り、社会人として地域と関わるキャリア形成について発見がありました。特に上入佐慶太さんのような、『会社を辞めて独立する』のではなく、『会社組織にいながらパワフルに地域と関わる・自分のやりたいことをやる』という働き方・ライフスタイルがあることを知り、キャリア観が広がりました。
それまで『やりたいことをやるには会社を辞めて独立するしかない』と思い込んでいたので、参加前の『将来どうしよう、やばいな』というモヤモヤした不安は、社会に出るのが楽しみだという『ワクワク』へと変わりました。
一方で、挑戦する人を孤立させずに、誰にとっても再現性のあるシステムを構築したり、熱意が途絶えないような空気感をどのように社会で醸成していくのかが課題です。
そこで、最初は『外の人』でも何度も現地に通い、地域の人と食卓を囲むような深い関係を築くことで、やがて親戚のような『中の人』に近い存在へと変化していくのではないかと今は考えています。組織内に仲間を増やして共創を活性化していくことで、社外との関わりも活発化していく。この二日間は、これからの地域との関わり方について考えるきっかけになりました。
今後は、大企業の理念だけでなく、具体的にどのような環境、ロジックで地方創生事業を行っているのか、そのリアルな環境の解像度を上げるためにいろいろな社会人と関わりを持って、話を聞きにいくことを意識していきます」
「多様なセクターと協働する時代、合意形成で新たな共創が生まれてほしい」(松下琴羽/東京女子大学)

松下琴羽は、2025年3月に宮城県石巻市での地域ベンチャー留学に参加し、その後は和歌山県田辺市の関係人口創出プログラムでも活動を経験。
「これまでの経験や、関東で生まれ育ち『帰るべき地元がない』という感覚を抱えていた私にとって、都市に住む人が地域に関わる手法としての『関係人口』という概念は興味の対象でした。地域創生に取り組む企業・組織の具体的な施策を学び、関係人口について探求する機会だと考え、参加を決めたんです。
また、かつて地域企業の方とプロジェクトを進めていく過程で、改善アイデアをうまく提案できずに、もどかしい気持ちを抱えたままプログラムが終了することがありました。そこで、あいだ作戦会議では、兵庫県立大学の自然・環境科学研究所、准教授の髙田知紀さんから、感覚ではない技術理論における合意形成について学び、活用法からオリジナル忍術書の完成を目指すグループに参加しました。
地域課題や人の価値観が多様化する時代において、『共助』が求められています。既存の選択肢から一つを選ぶことである『同意』と、異なる意見を組み合わせて新しい案を生み出す『合意』の違いを理解して、互いを尊重し共創を生み出す対話するスキルの必要性を実感しました。
『あいだ』の人である中間支援者が、自分の正しさを押し付けず合意形成に取り組むことこそが、着実な地域イノベーションにつながると考えます。これまでの地域活動で、協働してきた現地企業の方とのコミュニケーション方法について、深く振り返る機会になりました。
また合意形成の過程は、地域で活躍しているセクターの共通点である『地域のWILLを叶える戦略』を起点に、利益を創出している構造と共通点があります。
以上のセッションから、これまで関係を築いてきた石巻や和歌山などの地域に何度も通い、参加中のプロジェクトに誠意を持って取り組み、学びと対話の共創機会として、ミニBeyondカンファレンス(交流の場)を開催したいです」
まとめ
今回初めてBeyondカンファレンスに参加した私たち学生4人は、既存の組織に縛られない「出る杭」としての生き方や、キャリア形成における新たな視点を発見しました。
普段の学生生活では出会えない大人のリアルな悩みに触れ、対等に対話した二日間は、私たちの視野を圧倒的に広げてくれたのです。「今のまま就活していいのかな」という将来へのモヤモヤは、いつの間にか社会へ出るのが楽しみな「ワクワク」へと変わっていました。
未来の社会課題解決の当事者は、私たち学生。
課題観を抱えて一歩動き出したい人、新たな価値観に出合いたい人、キャリアに悩んでいる人は、次回開催時にぜひ参加してみてください。
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