ローカルベンチャー

地域に根ざした健康拠点を目指して。和歌山県田辺市でTANABEESメンバーと挑む、新しいフィットネスのかたち

※本記事は寄稿記事です

和歌山県田辺市が実施する関係人口創出プログラム「TANABEES」。地域プレイヤーと全国から集まる参加者が約半年間にわたりプロジェクトを共創し、新たな地域の可能性を生み出していく取り組みです。

今回お話を伺ったのは、田辺市でゲストハウスとフィットネスジムという2つの事業に挑戦する園田貴弘さん。AIも積極的に活用しながら、「地域に必要とされるサービスとは何か」を模索し続けています。地域との関わり方や、TANABEESで実現したい未来について伺いました。

園田 貴弘(そのだ たかひろ)さん
合同会社はなむけ 代表社員

1988年、広島生まれ。大学時代は国際ボランティアサークルに所属し、長期休暇を利用して発展途上国に家を建てるプロジェクトに参加。その後も1年間休学し、ブルガリアでのインターンシップや東西ヨーロッパを一人で旅して回るなど、国際色豊かな学生生活を送る。卒業後は大阪・東京で10年ほど会社員として働いたのち、コロナ禍や子どもの誕生をきっかけに自身の働き方や暮らしを見つめ直し、奥様の故郷である和歌山県田辺市へ移住。2024年に合同会社はなむけを立ち上げ、現在にいたる。

田辺で描く!2つの新たな挑戦

──はじめに、園田さんが田辺市で事業を興そうと思ったきっかけを教えてください。

きっかけはコロナ禍でした。家にいる時間が増えて、自分がこれからどう生きたいのかを考えるようになりました。

以前から、田辺のおおらかで肩肘を張らない風土が好きだったこともあって、「ここで挑戦してみよう」と思ったんです。

僕はここに来る前は東京で働いていました。都会には、「たくさん勉強して、いい大学に入って、いい会社に就職する」という価値観が、言葉にされなくても自然と根付いていたように思います。その考え方自体を否定するつもりはありません。ただ、自分の子どもには、それだけが当たり前だと思ってほしくない。だからこそ、僕自身が自分で道を切り開いていく姿を見せたいと思いました。

子どもを見ていると、本当に無限の可能性を感じます。見よう見まねで絵を描いたり、楽器を弾いたりしているうちに、できることが少しずつ増えていく。その姿を見て、「自分もまだ何にでも挑戦できるんじゃないか」と思ったんです。

そう考えると、会社をつくって事業を始めることも、決して特別なことではないのかもしれない。やってみれば、自分にも道を切り開く力があるかもしれない。そんな思いが、起業につながりました。

──次に、園田さんが田辺市で取り組まれている事業について教えてください。

今取り組んでいる事業は2つあります。1つは一棟貸しゲストハウス「Kumano Casa」の運営です。

こちらは2025年6月に開業してから約1年が経ちました。実際に運営を始めてみると、本当にさまざまな気づきがあります。

一生のうちに何度もあるわけではない大切な旅先として、田辺という町や「Kumano Casa」を選んでいただけることは、本当にありがたいことです。だからこそ、お客様からいただくご意見や気づきを一つひとつ大切に受け止めながら、「もっと快適に過ごしていただくにはどうすればいいか」を考え、少しずつ改善を重ねています。

ゲストハウス運営をしていると、事業とは最初から完成形があるものではなく、お客様の声を受け止めながら少しずつつくり上げていくものなんだと実感します。

現在は、Kumano Casaで運営する2棟のみですが、将来的には物件を増やして施設間の相互利用ができるようにするなど、お客様により便利、快適に使っていただける環境にしたいと思っています。

──TANABEESでは、もう1つの事業であるフィットネスジムの運営施策を皆さんで考えていくと伺っています。

はい。Kumano Casaから程近い場所に夏頃開店予定で、地域の皆さんがもっと気軽に運動できる場所を目指しています。最近は24時間営業の無人ジムも増えていますが、完全に無人というよりは「半分有人・半分無人」くらいが理想ですね。開店当初からスタッフを常駐させるのは難しいですが、人との関わりも大事にしたいと思っています。

現在は、AIを活用して、その人の年齢や運動経験、過去の病歴などから最初のトレーニングメニューを提案したり、注意点を伝えたりする仕組みを作っています。

地域に健康を気軽に楽しめる場所をつくりたい

──ゲストハウス運営に挑戦し始めてすぐに、フィットネスジムを始めるという展開が、とてもユニークだと感じました。設備投資も大きいと思いますが、このタイミングで始めようと思われた理由は何だったのでしょうか。

ゲストハウス運営のため、土地と物件を購入した際、こちらの物件も一緒に取得したんです。空いているスペースをどう活用しようか考えていたところ、幸運にもトレーニングマシンを相場より安く購入できる機会があって、「これは入れよう」とほとんど衝動的に決めました。

僕自身、体を動かすことが好きというのもありますが、それ以上に、人生を楽しみ続けるために健康でいることが大事だと思っています。だから、この場所も「筋肉を鍛える場所」というより、自分らしく元気に人生を楽しむための場所にしていけたらいいなと思っています。

なのでフィットネスジムは、「地域の交流拠点」の一つになればいいなと思っています。「痩せたい」「筋肉をつけたい」という人だけではなくて、「最近、ちょっと運動不足だな」「なんとなく体を動かしたほうがいいかな」くらいの人でも気軽に来られる場所です。

僕自身も長年筋肉トレーニングを続けてきましたが、ハンバーガーが大好きだったりします(笑)。ストイックに頑張る人だけの場所じゃなくて、「これからも食べたいものを食べたいから、そのぶんちょっと運動しようかな」くらいの感覚で来てもらえたらうれしいです。

多様なバックグラウンドを持つ仲間と描く事業の未来

──突然ですが、予想外のことが起きたとき、園田さんが頼りにしている人は誰ですか。

「たなべ未来創造塾」の仲間たちです。「たなべ未来創造塾」では、地域課題をチャンスと捉え、ビジネスの力で解決するべく、人材育成とビジネスモデルの創出を実施しています。かく言う僕も、卒業生の一人です。

お世話になっている方に未来塾のことを教えていただき、田辺市に越してきてすぐ応募しました。一般的なビジネスの知識だけでなく、田辺市の地域課題を最前線で活躍されている事業者の方から直接聞けることにも魅力を感じました。

いろいろな業種の方がいて、経てきた経験もそれぞれ違うので、とても頼もしいですよ。自分も頼りたいし、逆に頼ってもらえる関係でもありたいですね。10年、20年と続く仲間になれればいいなと思っています。

でも、驚いたことに、僕には今のところ大きな困りごとがないんです。理由は、周りの人が自然と助けてくれるから。引っ越してきたばかりの頃も、ご近所さんが声をかけてくれて、「ああ、懐が深い町だな」と感じました。

──今回、なぜTANABEESに参加しようと思われたのでしょうか。

今ある事業を、もっと面白くしていきたいと思ったからです。「限られたリソースのなかで、お客様にもっと喜んでもらうにはどうしたらいいか」を一緒に考えて、実現していきたい……。そのための仲間を募集しています。

参加メンバーのみなさんにやってほしいことを、最初から決めているわけではありません。「顧客満足度を上げる」「会員数を増やす」という目的だけを共有して、自分たちに何ができるかを一緒に考えたいです。

それぞれの得意を活かしてSNSを運用するのもいいし、地域イベントを企画するのもいい。もちろん、商店街と連携する方法も大歓迎です。

異なるバックグラウンドの人たちだからこそ、新鮮なアイデアが生まれることを楽しみにしています!

地域に挑戦の連鎖を生み出したい

関係人口創出プログラム「TANABEES」のしくみ(TANABEES Webサイトより)

──TANABEESのコーディネーターには、どのような役割を期待していますか。

TANABEESで取り組む事業が安定的に走れるよう、一緒に支えていただきたいです。まだまだ立ち上げ期の当社は、事業の安定化・充実化、地域への貢献などに注力していきたいフェーズにあります。

なので、今回のプロジェクトでは次の成長フェーズを見据えて足元を固めつつ、地域や会社の将来をワクワクさせるような施策に取り組んでいきたいです。

僕自身、暴走するタイプではないと思っていますが、第三者として「今の方向性で大丈夫ですよ」「少し軌道修正したほうがいいですね」と助言をもらえると心強いです。

──「地域プレイヤー」という役割を、ご自身ではどのように捉えていますか。

正直に言うと、「地域を変えたい、支えたい」という思いもある一方で、僕はまず、自分自身の人生を、この田辺の地で目一杯楽しみたいです。

「新たな挑戦をして、その感触を確かめていきたい」という気持ちが強いですね。

田辺市には、中長期的に見ると、人口減少などの課題が確実にあります。今の段階では、「自分の事業が田辺のためになっています」と胸を張って言えるほどではありませんが、小さくても何かおもしろいことに挑戦している姿を見て、「自分もやってみようかな」と思う人が少しずつ増えていくような連鎖が生まれることには意味があると思っています。

未来塾のOBとしても、そういった動きを続けていくことが大切なんじゃないかと考えています。

今は、何より自分たちで何かを生み出し、形にしていくことが純粋に楽しいです。その楽しさを、これからもっと周囲の人たちに伝え広めていきたいと思っています。

地域課題を、新しい事業の種に変える

──今後は、生成AIなどを活用した新たな取り組みも考えていらっしゃるのでしょうか。

生成AIの活用は、あくまで手段です。しかし、生成AIが普及してから、「これがあったら便利なのに」と思うことが実現しやすい時代になりました。

例えば、運動中のフォームチェックや、習熟度にあわせたトレーニングメニューの提案ツールも僕が制作しています。さらに、利用者から寄せられる相談内容を分析して、「地域の人はこういうことに困っている」というデータを蓄積し、サービス改善につなげることもできると思っています。

──最後に、TANABEESに関心を持っている皆さんへメッセージをお願いします。

地域の商店街で始まる新しい事業に、半年間しっかり関われる機会はなかなかありません。期間限定だからこそ、思い切って挑戦できるよい機会にもなるはずです。ぜひ遠慮せず、積極的に関わってほしいですね。

最終的に「みんなでつくった成果だね!」と言えるプロジェクトにしたいと思っています。

そして、このご縁がTANABEESの期間だけで終わるのではなく、その先も続く関係になればうれしいです。


<関連リンク>
>> TANABEES Webサイト

>> TANABEES 公式LINE (※プログラム情報や説明会申込フォームをご案内します)

>> TANABEES 公式Instagram

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この記事を書いた人
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地域の暮らしを取材する編集ライター。東京都で雑誌編集者を経験したのち、2024年に独立。 「暮らしを食むように愉しむ」をモットーに生まれ故郷である鹿児島県へ移住し、編集者・取材ライターとして活動しながら、「森、食、暮らしをつなげるコンテンツづくり」に取り組んでいる。

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