ローカルベンチャー

キャピタリズムとローカリズム。矛盾するOSを接続するためにできること──都市と地方の共創を持続可能にする新潮流【Beyondカンファレンス2026(5)】

2026年5月、虎ノ門ヒルズで開催された「Beyondカンファレンス 2026」に、多様なセクターから491名が集結しました。第5回目を迎える今回は「個の意志に、組織の動力を。」がテーマ。個人の意志や想いを組織の動力にし、社会を動かすエネルギーへ変えていくために、社会課題解決の最先端を走る挑戦者たちと、実践的なアプローチを議論しました。

2011年東日本大震災での経験から、10年に渡ってその必要性が訴えられ続けてきた、都市と地方との共創。しかしながら、それらの共創は実証実験に留まるケースが少なくなく、継続されていくことは未だ稀だと言われています。

一方で、農山漁村の衰退、気候変動の深刻化、格差の拡大、孤立の蔓延など、社会課題領域における共創を必要とするテーマは増加の一途を辿っています。どうしたら、共創が企業にとって持続可能となり、本質的に取り組むべきものとして認識されるのでしょうか。

その突破口を考えるために「Beyondカンファレンス2026」で開催されたのが、「なぜ都市と地方がかきまざらないのか?〜経済合理性の非合理性、マーケットインからライフアウトへ〜」です。

先駆的に突破の可能性を見出しているいくつかの地域をケースに、企業と地域が本気で共創を目指す構造のあり方、そして関係人口が企業を巻き込んだうねりとして広がっていく社会を考えるセッションとなりました。

<登壇者>
高橋 博之(たかはし ひろゆき) さん 株式会社雨風太陽 代表取締役 /JVP:Japan Vitalization Platform発起人・代表

上入佐 慶太(かみいりさ けいた)さん 日本航空株式会社 JAL社内ベンチャーチーム W-PIT 能登復興事業 統括/JVP:Japan Vitalization Platform 副代表

原田 佳南子(はらだ かなこ)さん 瀬戸内ワークス株式会社 代表取締役 / 一般社団法人佐嘉再興パートナーズ

古田 秘馬(ふるた ひま)さん 株式会社umari 代表

淺野 雅之(あさの まさゆき) さん NTT-ME 取締役 経営企画部長

中嶋 崇史(なかじま たかふみ)さん 株式会社ワコム 取締役COO / 株式会社リクロスエクスパンション 代表取締役 / 株式会社球磨村森電力 代表取締役

<モデレーター>
平野 貴大(ひらの たかひろ) さん JVP:Japan Vitalization Platform

※記事中敬称略

衰退に直面する地方で起きている、構造の変化。「外から内(マーケットイン)」から「内から外(ライフアウト)」へ

平野:まずセッションの補助線として、「都市と地域をかきまぜる」をキーコンセプトに、新たな人流を生み出し日本の未来を創っていくコンソーシアムJVP(Japan Vitalization Platform)で議論してきた、「マーケットインからライフアウトへ」というコンセプトについてご紹介させてください(下図参照)。

従来の「マーケットイン」は、事業者や行政が「生活者」の外側にあり、外側から内側に向けてサービスやモノを一方的に提供する矢印(外→内)が強い世界観でした。しかし、地方が衰退していくと、この「外から内」の線が細くなり、ビジネスも行政サービスも成り立たなくなっていきます。

そこで重要になるのが、右側の「ライフアウト」という考え方です。これは、その地域での暮らしや生活の中から「どういう日常が欲しいのか」という内なる意志(ウィル)を起点に、内側から外側へと動かしていく(内→外)世界観です。

内から外への矢印が強くなれば、行政や事業者は「自分たちが何をすればいいのか」「どう組めばいいのか」が明確になります。また、生活者と事業者がコストやエネルギー、時間を共有し合うことで、経済性が成り立ちにくい地域でも新しい価値を生み出せるようになります。

高橋:ライフアウトという言葉を、このJVPの仲間たちとの対話から聞いたとき、僕にとっても大きな発見でした。

たとえばスマートフォンの登場前、携帯電話メーカーはお客さんに「どういう機能が必要ですか」と尋ね、みんな似たようなインターフェースで、ちょっと便利な機能がついたものを競ってつくっていました。これが「マーケットイン」の世界ですよね。でも最終的に、彼らはスティーブ・ジョブズの世界に飲み込まれてしまった。

ジョブズは完全に「ライフアウト」だったと思うんです。「こんなものがあったら世界はめちゃくちゃ楽しくなる」という、現在を生きる1人の人間としての強い意志(ウィル)を持っていた。お客さんと握るのではなく、時代と握っていた。

地域活性化も全く同じです。「こういうデータが出ているので、弊社のこのプロダクトを導入すれば儲かります」と入ってくる企業は、ほとんどが失敗しているのではないでしょうか。

そうではなく、まずはその場所に1週間でも身を置いてみる。地元のばあちゃんと茶飲み話をして、本当にそれは課題なのか、自分自身はそれを解決したいと思えるか。そこからスタートするのが「ライフアウト」です。

だから僕は「共創の前に、共生(”共に生きていく”というスタンス)があるべきだ」と言っています。最初から「うまくいくかどうか」から入ると、少しでもうまくいかないとすぐに撤退してしまう。惚れてもいないし、覚悟もしていない状態だからです。こいつらと一緒に生きていくんだという「共生」から入り、その縁を切らさないために、なんとかビジネスとして成り立たせる。そういう順番なのだと思います。

人口減少に「どう対処するか」という対処療法ではなく、人口が減るにしても「あんたはこの社会でどう生きていきたいんだ」という自身のウィルが問われている。地方はそのウィルを発揮しやすい、素晴らしいフロンティアなのだと思います。

都市の合理性はシステム化。地方の合理性は暮らしに立脚。この葛藤を乗り越えようとするNTT-MEの実践とは

平野:では、そうした「ライフアウト」や「ウィル」の熱量に対して、大手企業側からはどう見えているのか。淺野さん、企業としての難しさも含めていかがでしょうか。

淺野:私は都市と地方では、持っている「合理性」が若干ズレているのではないかと感じています。

都市の合理性は「効率」「スピード」「再現性」といった、かなり整理しやすいものです。一方で地方の合理性は「つながり」「歴史」「納得感」といった、暮らしに立脚したものが先に立ちます。

この合理性がズレたまま、都市側が「自分たちの合理性こそが正しい」と思って地域に入っていくと、交わるものも交わらないのかなと。はじめは小さなズレであっても、プロジェクトが進むにつれて決定的なズレとなり、関係が終わってしまう。そうしたケースを少なからず見てきました。

何かを始める前に、お互いがどういう立ち位置で、何を考えているのかという前提条件をしっかり合わせることから始めないと、この矢印はうまく相互に向かないのではないかと思います。

平野:その葛藤をクリアするために、NTT-MEさんでは実際にどのような取り組みをされているのでしょうか。

淺野:NTT-MEは、NTT東日本の100%出身の子会社です。以前は社会インフラの構築や運用など設備サイドを担っていたのですが、2023年の10月に組織を大改革して、我々のエンジニアリングを活用して地域の環境エネルギーやデータセンターなど地域に貢献していく領域に注力を始め、4500人だった社員も3倍の1万3000人に増えたところです。

ただ、我々が地域で新しくエネルギービジネスを立ち上げようとした際、すぐに「出資する」という判断ができるわけではありませんでした。地域側の文脈や歴史、キーパーソンを理解していないままでは進められないからです。

そこで、島根県雲南市に社内でも非常に優れた小磯さんを1年間送り込みました。雲南市で今何が起こっていて、どんな人たちがどんな課題を持っているのか、地域の文脈を理解し、関係性を築くことから模索しています。

地域が何を大切にしていて、逆に「これをしてはいけない」というタブーは何なのかを理解した上で、サービスを設計する。このシークエンスを大切にしています。

平野:小磯さんは部長クラスの方ですよね。NTT東日本・西日本という枠組みを超えて、1年間地域に根ざして「ライフアウト」で活動されている。それを経て、NTT-MEの経営陣にも変化や揺らぎはありましたか。

淺野:人材を1年間派遣することは、社内では「コスト」と見る人もいれば、「必要な投資」と見る人もいます。単年度の収益を追うセクションから見れば、一見コストに見えるでしょう。

しかし、地域でビジネスをやるということは、10年、20年というスパンで物事を考えなければなりません。そう考えると、事前に地域とつながり、文脈を理解するための1年間は的確な判断投資だと思っています。

小磯さんが現地でつくってきた関係性や、何が地域に刺さって何が刺さらないのかという知見は、コンサルタントを雇っても絶対に得られない「生の声」です。これを社内に持ち帰ってくれたことは、非常に大きな成果だと思っています。ただ、ここからどう事業につなげ、持続させていくかが、今まさに直面している課題です。

当日のグラフィックレコーディングより抜粋。全体図は文末に掲載

地域側は思い、企業側は効率を語り、最後まで混ざらず終わらないために。必要なのはキャピタリズムとローカリズムを接続する仕組み

上入佐 :ここで地域側の視点もお聞きしたいです。古田さん、企業が地域に入ってくる際、率直にどう感じていますか。「もっとこうすればいいのに」という思いはありますか。

古田:今、世の中の価値観は「キャピタリズム(資本主義)」「バーチャリズム(SNSの世界)」、そして「ローカリズム(地域主義)」の3つに分かれていると思っています。

「キャピタリズム」の限界が見えてきたからといって、そのまま「ローカリズム」に入ろうとしても、これまで話してきたように、そこには大きなギャップがあります。僕自身、地域でホテルづくりなどのプロジェクトをやってきましたが、3年前に先祖のお墓を三豊市に移したら、地域からの信頼度が劇的に上がって。「祭りの主催をやらないか」と声がかかるようになりました。そこには「お金」ではない価値観、違う価値観がパラレルな「OS」として存在しています。

ただ、地域の思いだけを語っていても、企業側は「株主への説明」や「投資回収」の部分で社内を説得できません。だからこそ、両者が納得できる「共通の仕組みやファイナンスのスキーム」をつくることが重要になります。

僕たちが三豊市で実践したのが「ローカルIPO」というモデルです。地元企業11社で出資してホテル「URASHIMA VILLAGE」をつくり、それが軌道に乗った段階で、建物などのアセットを切り離し、一般の方々からも広く出資を募る仕組みをつくりました。不動産投資として、どれくらいの利回りだと思いますか? 普通なら数パーセント、良くて10パーセントですよね。僕らの仕組みでは、実質「18.3パーセント」なんです。

ここにはカラクリがあって、現金での配当は「2パーセント」。残りの「16.3パーセント」は宿泊権(1泊16.3万円相当)として還元されます。これが地元のおじいちゃん、おばあちゃんたちに非常に好評なんです。銀行に預けても低金利ですが、ここに預ければ2パーセントの配当がつき、いつでも引き出せます。さらに、毎年お盆や正月に帰ってくる孫たちをこれまでも家が寒いからと温泉に泊まらせていた分を、「URASHIMA VILLAGE」に泊まらせられる。

当日のグラフィックレコーディングより抜粋。全体図は文末に掲載

さらに、JR西日本さんやJALさんといった大企業も出資してくれています。大企業にとっても、従来のように送客プロモーションに広告費を使うのではなく、出資することで地域が盛り上がり、宿泊権を株主還元や顧客プロモーションに使えるため、キャピタリズムの視点からも投資しやすいスキームになっています。

ローカリズムの価値を、キャピタリズムの文脈でも通じるように翻訳して仕組みを提示すること。これがないと、どうしても地域側は思いを語り、企業側は効率を語り、最後まで交わらないという結果になってしまいます。

三豊市は人口60000人ほどのまちですが、この5〜6年間で、地元の民間投資だけで約40社が立ち上がり、30億円ほどの投資が地域内で循環しています。クラウドファンディングも全国平均の35倍の頻度で立ち上がっています。

それは、単に「寄付文化がある」とか「熱い人」のモチベーションに頼っているからではありません。僕たちは週に3回、朝3時間だけ農業を手伝えば、家賃・光熱費・食費がすべてタダになる「ベーシックインフラハウス」という仕組みをつくっています。移住したい若者が常にウェイティングリストに並んでいて、彼らは農業の他にも地域で活動しながらお金を稼ぎ、生活支出がほぼゼロなので、1年後には自分たちの力で起業していきます。そして彼らが頑張っている姿を地元民が日頃から見ているからこそ、クラファンを立ち上げると一晩で100万円が集まるんです。

僕たちがこだわっているのは「モチベーションに頼らないまちづくり」です。1人の熱い人に依存すると、その人が倒れた瞬間、すべてが終わってしまいます。みんなが参加できる「仕組み」をどうつくるかは、とても意識しています。

都市の大企業が地域で取り組むべきは、他動詞の「横展開」ではなく、自動詞の「広がる」

古田:原田さんは大企業側から、熱量の高い三豊に飛び込んできた側ですよね。実際に中に入ってみて感じたギャップや気づきは何だったんだろう?

原田:かつて大企業側で「地方創生地域振興事業部」の営業をしていたのですが、その頃は恥ずかしながら「人口減少で衰退していく地方を、知名度のある都市の大企業がどうにかしてあげるのだ」と信じて疑っていませんでした。

けれど大企業側は時間軸が違っていてすぐに結果を求められますし、「その出張はどれだけ地域のためになるのか」と言ってほしかったんですけれど、「いくらになるの?」としか言われなくて。提案書も、自治体の名前を上書きして横流しする形になってしまって、「これで本当に地域は振興するのか?」と思い始めたときに、すごく嫌だと思ったんです。

古田:「地域と共に」って言いながら、皆さん補助金ほしいんだよねって、正直思ってしまいますよね。

原田:そんな感じで、初めて三豊に行ったときに「あの子何しに来てんの」と反感を受けたのは私でしたけども(苦笑)。

でも地域で、先ほど述べた「知名度のある都市の企業」と比べたら「誰にも知られていない小さな会社」の人々が、自分の人生を賭けて、この土地に根ざして活動している覚悟を目の当たりにして、自分も会社を辞めてこっち側になりたいと思ったんです。「助けに行ってあげる」なんて考えは、本当に申し訳ないものだったと深く反省しました。

今、私は「地域側」に立ち、地域のプライドを守る立場になりました。だからこそ、都市企業の気持ちも、地域側の気持ちも両方わかるんですよね。大事なのは、このキャピタリズムとローカリズムの間に入り、両者をつなぐ「グラデーション(橋渡し)」となれる人材を増やすことだと感じています。

古田:僕らはそうした、ローカルにも都市の企業が求めているものにも精通している人たちを、「ローカル外交官」と呼んでいます。

高橋:三豊で出会った「ローカル外交官」のような若者が言っていたことで印象的だったのが、都市部から来たビジネスマンが「キャッシュポイント」「横展開(スケール)」という言葉を口にした瞬間、もう一緒に何もできなくなるという話でした。

上入佐:一方で、僕も大企業側で能登復興事業をしていて、社内では「他の地域にどう展開するんだ」であるとか、取材されても「どう横展開するのか」は頻繁に問われている気がしますね。

平野:大企業はすぐに「どうやって他地域へ横展開するのか」を問いますが、淺野さん、雲南市での取り組みではどうでしょうか。

淺野:「横展開」といった言葉は、毎日社内で飛び交っていますね(苦笑)。ですが、高橋さんや皆さんとお話ししていく中で、「横展開を最初から狙っている時点で、おそらくうまくいかない」と思うようになりました。横展開というのは、事後的なものなのかなと。自ずと「横に広がっていった」となる仕組みを、どうつくれるのか。

企業の論理だけで、「これを横展開します」と進めるのはおこがましいと気づけないまま地域へ入り込むと、大やけどをして地域にも迷惑をかけます。「実証実験(PoC)だけやって、採算が合わないから撤退する」という企業が多いのは、まさにその証左なのかなと感じています。

高橋:従来の企業が語る「横展開」は他動詞。でも「広がる」って自動詞じゃないですか。これからは、おっしゃる通り自動詞で「広がる」という世界観じゃないと。無理矢理企業の論理で広げていく「横展開」は、地域では厳しいと思います。

古田:たとえばクラファンとか、全国で使われているじゃないですか。そうしたイメージで、裏側のファイナンスの仕組みとか、協働の構造とか、そういうものはどんどん横展開でやればいいと思うんです。各地域が「この要素ならうちの地域にも取り入れられる」と自発的にカスタマイズしていく形であれば、自然と「広がって」いくのだと思います。

一方で大企業は、すべてを自分たちが抱え込んで「横展開」しようとする傾向があるので、それは難しいかなという気がしますね。

次のマーケットを「つくる」のではなく、「つくられていく」という感覚を、大企業の中にもう一度取り戻す

中嶋:そもそも「横展開」する必要があるのかという問いからのスタートなのかなと。僕たちは結果的に九州、雲南、北海道など複数の地域で事業を展開していますが、最初から意図して広げたわけではなくて。バックオフィスの効率化や、共通化できる機能は確かに意図的にスケールさせていますが、共通化を進めれば進めるほど、「共通化できない、その土地固有の領域」が浮き彫りになってくるんです。

だからこそ、「大企業と地域が無理に混ざり合う必要があるのか?」とも思います。むしろ「混ざり合えない部分」を明確にする作業こそが重要なのではないでしょうか。スケールさせるべき機能は徹底的に効率化し、そこで生まれた時間や資金を、効率化できない、きわめて定性的な領域に突っ込んでいく。それが今の僕のミッションだと思っています。

ワコムの主力製品であるペンタブレットは、何台売れるかという予測は立ちますし、そこを伸ばすことも重要です。しかし、既存の仕組みだけでは次の成長は描けないので、新しい市場や価値観をつくりにいくのであれば、これまでの大企業の論理とは異なる「接続ファンクション」を組織内に持ち込まなければ不可能です。これは株主を説得するのが非常に大変なのですが、本当に必要な変革です。

次のマーケットを「つくる」のではなく、「つくられていく」という感覚を、大企業の中にもう一度取り戻す。それが僕の役割で、求められていることだと思っていますし、ここにいる皆さんもそれをされているのではないかな。そうした意味で、混ざる・混ざらないではなくて、自分や企業の中に矛盾を抱え込むことがポイントなのではないかと思います。

上入佐:僕もこの2年間、平日は東京で働き、週末は能登に通うという二地域居住を実践してきました。ようやくライフアウトの感覚が掴めてきて、これを今後どうJALの中で浸透させていくかが課題です。

今挑戦しているのは、能登との関わりを単なる「上入佐個人の活動」で終わらせないことです。社内ベンチャーという枠組みを活用して「能登復興事業」を会社の正式な事業として立ち上げ、自治体と会社との間で連携協定を結びました。組織として能登とのつながりをつくることで、会社の出張として能登に通える仕組みも整えています。

「地方創生」ではなく「大企業創生」。社会の停滞を打破するヒントは境界線の外にある

古田:僕は、今必要なのは「地方創生」ではなく「大企業創生」だと思っています。いろんな形で個人が自分で決断し、発信できるようになった時代に、大企業側のOSが古くなっていて、元気な個人の想いを許容できなくなっている。そうして元気な個人が本当に自分のことをするために、企業を出ていくしかなくなっているように感じます。

大企業の社員が三豊市に来て、地元の若者たちに会うと、おもしろいことにみんな落ち込むんですよ。自分たちは大企業に勤めていて「地域を助けに来てあげた」と思っていたのに、地域で生きる若者の方がはるかに生き生きと自分の言葉で人生を語っている。「豊かな人生を送るというのは、どういうことなんだろう」と気づいてしまうんです。

地域の老舗企業、たとえば何百年と続く酒蔵や和菓子屋などは、お金の論理だけでなく、地域にとって必要だからという理由で挑戦することができます。それを大企業が「地域創生部」や「CSR部門」だけに押し込んで管理しようとすること自体がもう違う。
新しい時代がきている中で、新しい側に行くのか、古いOSのまま頑張るのか、今ちょうど分かれ目なのかなという気がしてます。

高橋:今、社会が停滞しているのはメインストリームの停滞ですよね。そして、大企業はまさに社会のメインストリームです。これまでそのメインストリームが「非効率」として切り捨ててきたものの中にこそ、次のOSのヒントがある。外に出て、自分たちが何を切り捨ててきたのかを客観視して、そこで得た新しいOSを持って再び会社に戻り、組織を変革していくことが大事なのかなと。

原田:たとえば佐賀で100年続く企業の方は、そこに根ざして生きているから「佐賀から撤退する」という選択肢自体が存在しません。この覚悟の有無が、地域の企業と都市の大企業との決定的な違いなのかなと思っています。だからこそ、そうした地方中核都市の企業の変革を通じて大企業を刺激し、変容を促していくようなアプローチに、私は可能性を感じています。

古田:「PL(損益計算書)」と「BS(貸借対照表)」の捉え方の違いですよね。大企業は「この予算で単年度でどれだけ売上が上がったのか」と地域を「PL」で捉えますが、地域企業は「BS」です。短期的な採算は合わなくても、地域からの信頼を積み重ねておくことが、中長期的な会社の持続可能性につながるからです。

大企業の捉え方では、地域で一発ホームランか三振ですよね。だからルールをちゃんと理解するのは重要かなと感じます。お金の使い方を「PLの消費」から「BSへの蓄積」に変えるだけで、地域でやれることは劇的に増えるはずです。

当日のグラフィックレコーディングより抜粋


<関連記事>
>>「Beyondカンファレス」の記事一覧

<関連リンク>
>>第5回Beyondカンファレンス2026公式サイト

>>and Beyond カンパニーWebサイト

この記事を書いた人
アバター画像

1986年生まれ。学術書出版社にて企画・編集職の経験を経てから、2015年よりDRIVE編集部の担当としてNPO法人ETIC.に参画。2018年よりフリーランス、また「ローカルベンチャーラボ」プログラム広報。

この記事をシェアする
タイトルとURLをコピーしました