ローカルベンチャー

高校生の「はじめの一歩」を全力で応援。地域とつながることで得られる学びとは?【ローカルリーダーズミーティング2025レポート(2)】

2025年10月7日〜10月9日に島根県雲南市(うんなんし)で、「ローカルリーダーズミーティング 2025」(主催:ローカルベンチャー協議会/事務局:NPO法人ETIC.)が開催されました。

ローカルリーダーズミーティングは、地域で活躍するプレイヤーや行政関係者、民間企業の担当者、地域に根ざした活動に興味を持つ個人などが全国各地から集まり、情報共有や交流、現地視察などを通じて、地域づくりのヒントを持ち帰るためのイベントです。「ローカルリーダーズミーティング 2025」では全国各地から約230名が集い、これからの地域づくりを考えました。

本記事ではその中から、雲南市のキャリア教育や探究学習に関する取り組みについて語る、ローカルリーダー座談会の様子を要約してお届けします。高校生による地域をフィールドとしたプロジェクト学習の実例を中心に、雲南市独自の取り組みを紹介します。

<スピーカー>
スペシャルチャレンジJr.プログラム経験者3名
秦 美貴(はた みき)さん
加武 美咲(かぶ みさき)さん
深田 裕紀乃(ふかだ ゆきの)さん

山田 雄介(やまだ ゆうすけ)さん 一般社団法人ine
武田 遼太(たけだ りょうた)さん 雲南市教育委員会

<モデレーター>
成宮 崇史(なるみや たかふみ)さん 気仙沼まち大学運営協議会

※記事中敬称略

キャリア教育や探究学習を中心とした、雲南市の「子どもチャレンジ」の取り組み

成宮:雲南市では「チャレンジの連鎖による持続可能なまちづくり」を掲げ、行政を挙げて子ども・若者・大人すべての世代のチャレンジを応援しています。「子どもチャレンジ」ではキャリア教育や探究学習を中心とした取り組みが行われていますが、今日はその中から「スペシャルチャレンジJr.プログラム(以下スペチャレ)」という施策について詳しく伺っていきます。

山田:一般社団法人ine(以下、ine)の山田です。今後人口が減少しても持続可能な地域になっていくためには、どこにいても自己効力感高く、それぞれの道で活躍し、自らと地域(他者)を幸せにできるような人材の育成が重要だということで、雲南市では官民連携でキャリア教育に力を入れてきました。

山田:今日ご紹介するスペチャレは、高校生による地域のためのプロジェクトや、自分の可能性を広げる出会いを雲南市がサポートする教育プログラムです。

国内外留学サポートコースと、イベントや商品開発などを通じて身近な課題解決に挑戦する、プロジェクトデザインサポートコースの2つがありますが、今回はプロジェクトデザインサポートコースの卒業生3名に、それぞれどんな活動に挑戦したのか話してもらう予定です。

プロジェクトデザインサポートコースでは、例年4月上旬に参加者を募集しています。今年度は第8期生が活動していて、これまでに130名以上が参加してきました。

まずはキックオフイベントで興味関心の掘り下げや、プロジェクトの種となるようなものを見つけ、2カ月程かけて自分が取り組みたい課題を解決するためにどんなアクションをしていくのか、計画を立てていきます。リーフレットなど何らかの制作物や、イベントの実施を成果物とする場合が多いですね。

そしてスペチャレ審査会で審査員に対してプレゼンテーションを行い、プロジェクトの実施に必要な補助金の取得を目指します。最大30万円の補助が支給される制度ですが、活動を通じて学ぶことが目的なので、上限いっぱい使いたいという提案は多くありません。トータルの補助金額は150万円程度で、毎年15件ほどのプロジェクトを雲南市がサポートしています。

プロジェクトを形にする上で、大人が思う以上に一つひとつのステップが高校生にとっては難しいんです。挑戦を後押しする大人がいることで、いつでも気軽に相談できるというのが重要なのかなと思います。参加した高校生の多くは、卒業後も雲南市の地域活動に積極的に関わる傾向が高いですし、雲南市とのつながりを途切れさせないことで、Uターンという選択肢も取りやすくなるのではないでしょうか。

4カ国語で外国人向けの問診票と院内案内を作成。その後の進路選択にもつながった──「メディカルデザインプロジェクト」秦美貴さん

成宮:それではここからは、高校生の頃スペチャレに参加したという3人に、自分たちが挑戦したプロジェクトや、その時の経験が今にどう繋がっているかを語っていただきたいと思います。まずは、「メディカルデザインプロジェクト」に取り組んだ秦さん、お願いします。

秦:私は雲南市内で医療機関を利用する外国人向けに、診療科目が書かれたステッカーや問診票を4カ国語で作成し、市内の病院に置いてもらっています。イラストも入れて、指を差しながら受け答えできるようにしました。

このアイデアを形にするまでは何度も失敗しています。ヒアリングをして初めて、高校生の「当たり前」で考えていて、実際に使う人のニーズを把握できていなかったことに気付いたんです。初めは英語で作成しようとしていましたが、雲南市はベトナムやミャンマーの方が多いとわかり、使用言語をアジア圏中心に変更しました。さらにステッカーよりも問診票がほしいという声が多く、限られた予算の中、追加で作成することになったので大変でしたね。

高校卒業後は県内の大学に進学し、ineの長期インターンとして若者向け情報誌の制作などに取り組みました。もともと看護系の仕事を考えていましたが、スペチャレを通して誰かの力になるにはさまざまな形があることを実感し、制度やまちづくりの視点から地域のために働きたいと考えるようになったんです。

住んだことがない地域で暮らしてみたいという思いもありますが、自分に近い人や場所のために島根で働くことに決めます。スペチャレは、進路選択や今の生活の大切な軸が作られる経験でした。

雲南の魅力を絵本で発信。活動の中で生まれた地域との関わり──「雲南絵本プロジェクト」加武美咲さん

成宮:続いて、「雲南絵本プロジェクト」に挑戦した加武さんにお話ししてもらいます。

加武:私は雲南市の魅力が詰まった絵本を作って、子ども達や大人に届けたいとプロジェクトに取り組みました。夕日がきれいだなと感じたことや、コウノトリが飛んでいるのを見て幸せな気持ちになったことなど、実体験が盛り込まれています。

最初は詰め込み過ぎて堅苦しい文章になっていたので、絵本作家さんにアドバイスをもらって、短くシンプルでリズムがいい言葉を選び、何度も書き直しました。絵本を作るプロジェクトなのに絵が苦手なので、結局友人に頼んだのですが、自分の頭の中のイメージを伝えるのは難しかったですね。完成した絵本は増刷分も合わせて500冊以上印刷して、幼稚園や保育園、小中学校、高校、交流センター、図書館、協力者の方々などに配布しました。

スペチャレに参加したことで、自分で考えて動く主体性が育って、自信がもてるようになったと思います。何より、地域でこども食堂や読み聞かせ活動をされている方とつながれたことは一番の財産です。大学生になった今は、そういったイベントにスタッフとして参加しています。

雲南市は一歩踏み出せば、本当にいろいろな人とつながることができるんです。1回で終わりではなく、次につながる。「あなたが来てくれて助かった」と喜んでもらえる。こんな風に「地域に育ててもらった」という感覚をもてるよう、今度は大学生の立場からサポートする側になれたらと思っています。

産前産後ケアに役立つカレンダーを制作。一歩踏み出せた経験が自信に──「笑顔プロジェクト」深田裕紀乃さん

成宮:最後は、「笑顔プロジェクト」で産前産後ケアに役立つカレンダー作りに取り組んだ深田さんです。

深田:スペチャレに参加する前は、自分の強みもわからないし、将来やりたいこともありませんでした。このプロジェクトも、ペアを組んだ子が助産師になりたかったから始めたものです。ただ、地域と関わるのは楽しそうだったし、「変わりたい」という気持ちで参加しました。

スペチャレでは、応援してくれる大人がたくさんいます。その環境がプロジェクトの推進力になりましたし、自分も一歩踏み出せるんだと気付くきっかけになりました。実際にできあがったカレンダーを市内の妊婦さんたちに見せたら、「高校生なのにすごい」「どうやって作ったの?」と興味をもってくれて、私も誰かの役に立てるんだと実感できたことが印象に残っています。このときの経験は、誰かと関わる仕事がしたいという、将来の仕事選びの明確な軸になりました。

スペチャレに参加したことでたくさんのつながりを得られましたし、挑戦するおもしろさや貢献できる喜びを感じることができました。後輩達にもそれを知ってもらいたくて、現在はineのインターン生としてスペチャレのサポート役をしています。ちょっと会わない間にプロジェクトがすごく進んでいたり、たくさん考えていたりするのを見ると自分もがんばろうと思えるので、これからもスペチャレOGとして地域に関わっていきたいです。

地域や行政が縮小していくなかで、いかに次世代のための取り組みを続けていくか

成宮:ここまでスペチャレを中心にお話を伺ってきましたが、座談会の締めくくりとして、それ以外のキャリア教育に関する取り組みや、現在感じている課題について、雲南市教育委員会の武田さんからご紹介いただけますか。

武田:雲南市では「『夢』発見プログラム」という、幼児期から高校生まで発達段階に応じたキャリア教育実践プログラムを実施しているので、どんなキャリアを積んでいくか考える機会は多いのではないかと思います。また、学校・地域・家庭をつなぐ存在として、市内の全小中学校に地域コーディネーターを配置している点も特徴です。

特に高校向けには「雲南式探究」という、「総合的な探究の時間」を活用して雲南の人や魅力を感じられるプログラムを実施しています。市内3高校でそれぞれ独自のプログラムを組んでいて、各地域の特色や資源を活かした授業が展開されています。「『夢』発見プログラム」と合わせて幼児期から積み重ねることで、アンケート調査からは雲南市が好きだという生徒や、地域に貢献したいという生徒が増加したことも伺えました。

一方、地域のリソースや行政が小さくなっていくなかで、どうやってこういった取り組みを続けていくかは課題です。地域を思う人の循環を生み出すためには、学校・地域・民間・行政が連携しながら、地域の教育環境を向上させることが必要だと思います。


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<関連リンク>
>> ローカルリーダーズミーティング2025in島根県雲南市 Webサイト

>> ローカルベンチャー協議会 Webサイト

この記事を書いた人
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宮崎県高千穂町出身。中高は熊本市内。一橋大学社会学部卒。在学中にパリ政治学院へ交換留学(1年間)。卒業後は株式会社ベネッセコーポレーションに入社し、DM営業に従事。
その後岩手県釜石市で復興支援員(釜援隊)として、まちづくり会社の設立や、組織マネジメント、高校生とのラジオ番組づくり、馬文化再生プロジェクト等に携わる(2013年~2015年)。2015年3月にNPO法人グローカルアカデミーを設立。事務局長を務める。2021年3月、東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。

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