2025年10月7日〜10月9日に島根県雲南市(うんなんし)で、「ローカルリーダーズミーティング 2025」(主催:ローカルベンチャー協議会/事務局:NPO法人ETIC.)が開催されました。
ローカルリーダーズミーティングは、地域で活躍するプレイヤーや行政関係者、民間企業の担当者、地域に根ざした活動に興味を持つ個人などが全国各地から集まり、情報共有や交流、現地視察などを通じて、地域づくりのヒントを持ち帰るためのイベントです。
「ローカルリーダーズミーティング 2025」(以下LLM2025)では全国各地から約230名が集い、これからの地域づくりを考えました。
本記事ではその中から、雲南市の波多・松笠地区へのフィールドワークの様子を要約してお届けします。地域から商店や移動手段がなくなるといった全国共通の課題に住民主体で取り組む、波多コミュニティ協議会の活動を中心にご紹介します。
<地域案内人>
木村 守登(きむら もりと)さん 波多コミュニティ協議会 会長
藤原 美幸(ふじはら みゆき)さん 波多コミュニティ協議会 主事
石橋 生久美(いしばし いくみ)さん 松笠振興協議会 主事
※記事中敬称略
地域に眠る資源を活かして生まれた「スポーツずむ」に「えぇースポーツぱーく」
フィールドワークが実施された6地区の中でも、波多・松笠地区は雲南市の中心部から車で約40分と距離があり、人口減少や高齢化も特に進んでいるエリアです。今回のフィールドワークでは、2008年3月に閉校した旧波多小学校を活用して設置されている、波多交流センターを訪れました。
施設内を案内してくださったのは、地域自主組織である波多コミュニティ協議会(以下協議会)の藤原さんです。正面玄関から入って右手へ進むと、「はたスポーツずむ」の看板が目に入ってきました。

藤原:雪深いエリアなので、冬になると散歩もできなくなることがあります。雨や雪でも住民が体を動かせるようにとできたのが、「はたスポーツずむ」です。「ジム」というほどではないので、この地区の方にもなじみ深い発音の「ずむ」と呼んでいます。
コロナ禍前からお付き合いのある企業の方が年に数回訪問してくれるので、この器具はもう少し離した方がいいなど、いろいろとアドバイスいただいています。たとえば人とつながり町を元気にする「株式会社CNC(コミュニティナース)」からは、来た人の血圧などを尋ねるようにと助言いただきました。
お隣の松江市で職業病の予防や改善などに取り組んでいる、株式会社フジイコーポレーションからは、運動の流れや活動中に体調が悪くなった場合の対応などをまとめて掲示してもらうといったサポートを受けています。

さらに「ずむ」の一角には、運動だけでなく大画面でゲームもできる「えぇースポーツぱーく」まで併設されています。
藤原:こちらも運動器具と同じく、一昔前に人気のあったゲームを寄付してもらいました。地域のおばあちゃんたちがゲームを楽しんでいます。Bluetoothでつなげばカラオケもできますよ。ここはお茶だけ、運動だけ、カラオケだけなど、どんな過ごし方をしても自由です。他地区の人がわざわざ買い物に来てお茶をしていくこともあります。
住民の健康も守るマイクロスーパー「はたマーケット」
波多交流センターには、地区内に商店がなくなったことを受け、2014年に協議会が主体となって立ち上げたマイクロスーパー「はたマーケット」も併設されています。
全国で中小規模のスーパーマーケットをサポートする全日食チェーンに加盟し、福祉事業の一環として運営されているそうです。コンビニよりも安く、大手スーパー並みの価格で商品が提供されているのには驚きました。
藤原:レジや発注、品出しといった業務は、波多交流センターの職員5人が通常業務と兼務で行っています。電子マネーやバーコード決済にも対応していますよ。午前中、夕方までなど、時間帯によって発注するものが決まっているので結構忙しいですね。

福祉事業と位置付けられていることもあって、雲南市の健康推進課に棚が2つ分貸し出され、住民の健康管理にも一役買っています。
藤原:こちらの棚では災害時に役立つような缶詰類を常備しています。3~4カ月に1度は市の栄養士さんが、「カップ麺の汁は残そう」とか健康を意識できるようなポップを書き変えたり、利用者に配布するレシピを更新しに来てくれます。
豆腐や納豆といった大豆製品や、牛乳などのたんぱく質豊富な商品の売上データなども、健康推進課と共有しています。年に2〜3回、たんぱく質の重要性を話す講座を開いていますが、その後実際にどのくらい買われるようになったか、効果測定できるんです。行政と連携してのたんぱく質調査は、ここ4年ほど実施しています。
自分たちの困りごとは自分たちの手で。住民のニーズに沿った協議会の活動
はたマーケットの開店に必要な資金はどのようにして調達されたのでしょうか。気になる資金面や売上について、協議会会長の木村さんからもお話しいただきました。
木村:昭和初期には1,500人とピークを迎えていた波多地区の人口も、今では220人程にまで減少してしまいました。こうした状況下で、住民の要望を受けて買い物や移動の支援に取り組んできたのが協議会です。
はたマーケットは今年で11年目になります。事業費として500万円必要だったので、200万円を「公益財団法人ふるさと島根定住財団」の補助金でまかない、250万円を地区外に出た人から、残る50万円を地区内から寄付してもらいスタートしました。借り入れた分もありますが、自分達の通帳を担保に8年かかって返済を終えています。
はたマーケットの年間売上はここ5年間の平均で1,150万円程、来店者数は年間7,000人弱です。採算ベースは月70~80万円ですが、月100万円程度の売上は維持できています。

また、波多地区の住民の半分以上は車での移動ができません。そこで協議会では、移動支援にも長年力を入れています。
木村:行政ができないところをなんとかするのが我々の役割ですから。友人の家、郵便局、路線バスへの接続、老人会への参加など、地区内の移動に利用してもらっているのが、2009年度から運行をはじめた地域内交通「たすけ愛号」です。
原則としてセンターの勤務時間内を運行時間として、主に交流センター職員が運転しています。当初は1人200円の利用料をいただいていましたが、現在は無料で、令和6年度は年間1,800回利用されています。
はたマーケット開店後に利用率も上がり、今年度は1日あたり6.4人が利用しています。最近は単車をやめてたすけ愛号を利用する人も増えましたし、地域内の移動手段としてなくてはならないものとなっています。

企業との協働で生まれ変わった防災イベント
「スポーツずむ」や「はたマーケット」の運営の様子からも伺えるように、協議会では企業との連携も自然と生まれています。2025年6月に実施された防災イベントは、市内外の企業勤めの方の協力で、これまでとは一味違った楽しいものになったそうです。
藤原:例年、消火器訓練などをやっていましたが、コロナ禍で間が空いてしまったこともあり、「話を聞くだけでしょ」といった声も上がっていました。
そんなとき、株式会社うんなん共創エネルギーの平野貴大さんが協議会に来てくれたんです。エネルギーの話はあまりピンときませんでしたが、一度一緒に何かやってみたいということで、防災イベントの話をもちかけました。
5月に初めて来ていただいたんですが、平野さんが来るたびにお仲間も増えて、当初は想像がつかなかったようなイベントになりました。
今年から株式会社CNCに入った竹内祐稀さんは、無印良品の店長をされていた経験もおありで、防災食のおいしい食べ方をレクチャーしてくださったり、株式会社NTT-ME(エムイー)の小磯さんが、はたマーケットにあるものでイタリアンを作ってくれたり。
このお料理は住民の方にも好評で、その後マーケットでは魚肉ソーセージが売り切れました(笑)。屋外ではEV車まで展示されていて、そこから電気をひっぱってポップコーンを作ったりもしました。
一緒にやれば地域の中も外もありません。一緒にやってもらうとうれしくて、最後は楽しくて、いつまでもこの関係が続けられるなと思っています。

同様の課題を抱える2つの地区。模索される広域連携
人口減少が続く波多地区では、近隣の松笠地区との広域連携も模索されています。波多地区の福祉事業として毎月実施している高齢者サロン「ほかほかわくわくサロン」を合同で開催するほか、子どもたちを対象とした「まつはたっ子サークル」では、多世代交流や出雲科学館へのお出かけなど、さまざまな共同事業も始まっています。松笠振興協議会の石橋さんからもお話を伺いました。
石橋:松笠地区は人口230人程度で、波多地区の10年後をついていっているような地域です。地区内最後の商店が2025年12月31日をもって閉店しますが、若い世帯と同居している家庭が多いので、お店がなくなって今すぐ困るという人も少なく、波多地区のように地域自主組織で買い物支援に取り組むまでには至っていません。
松笠も、松笠地区だけで何かをするのは限界にきています。今年はCNCの皆さんにも大変お世話になりましたし、とてもありがたかったです。とにかく人手が少ないので、5年先、10年先も見据えて他地区との協力を真剣に考えているところです。

フィールドワークで目の当たりにした協議会の取り組みは、「地域の課題を地域住民が自ら解決する」ということがすでに日常となっていて、LLM2025で打ち出されていた「えすこ・総働・鎮静化」というキーワードが体現されているように思えました。地域が直面する現実を見つめつつ、希望を感じられるフィールドワークでした。
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