
自分らしく、一歩踏み出して、地域の課題解決に関わる──
2020年5月に「長期戦略2040」を策定した長野市。市の経済基盤の底上げや長野地域の経済成長を牽引するための取組の検討を進めています。また取組に合わせ、社会課題先進地域といえる問題を解決すべく、2021年2月に「スマートシティNAGANO宣言」を行ないました。
市の課題を解決する事業モデルが、日本、アジア、世界へも波及する価値を創出することを目指し、長野市はスタートアップが次々に課題解決にチャレンジできる環境づくりに力を入れています。
今年度、その一環で新しくスタートするのが「NAGA KNOCK!(ナガノック!)」。東京などの都市部に住んで働きながら、長野市の企業やリーダーたちと新規事業立ち上げを行い、起業などを目指すプログラムです。
本記事では、この事業を担当している室田さん、大山さん、井上さんにお話をお伺いしました。起業をすでに目指している方、今後のキャリアを一度立ち止まって考えている方にぜひお読みいただきたい一本です。
- 室田 富美枝さん / 長野市企画政策部 企画課 企画調査担当主査
- 大山 俊宏さん / 長野市商工観光部 商工労働課 主査
- 井上 葉子さん / 長野市戦略マネージャー
ワクワクする未来を想像しながら生み出した事業──
──はじめに、今回の事業が立ち上がった背景をお聞かせください。
井上 : 長期戦略2040の中でも、若い人たちが長野市でチャレンジできる場をつくりたいという想いが大前提としてあります。
その中で長野市としての特色を出すためにも、まずは今の仕事をやめなくてもチャレンジできるよと、参加者の入り口の幅を広げるような企画を、事業のメンバー同士でブレストしながら考えました。
「自分の人生の広げ方は色々ある」ということを、今回の事業を通じてお伝えしたいですね。
──立ち上げ時期はどんな感じでしたか?
室田 : 苦しみも楽しみもありながらこの事業を生み出しました。
今回は、ペルソナづくりから始めました。初めての経験でしたし、その後のカスタマージャーニーづくりも初めてで、加えて起業経験もないこともあり、妄想の連続でした。
妄想が現実的に合っているのかどうか、すごく悩みながら、仲間たちとともにつくりあげました。そんな苦しい中でも、ワイワイガヤガヤ話し合いながら進められて、楽しいことも多くありました。
──楽しい部分はどんなところにありましたか?
室田 : 今回の事業を通じて、「長野市がどうなっていたらいいのかな?」「どういう長野市だったらワクワクするのかな?」というのを何度も想像しました。
起業したい若者たちが長野市にたくさん集まり、それに感化されて、長野市にいる若者たちも「私も起業したい!」と、そんな活気溢れる街になったらいいなと考えていました。そんなワクワクする未来を想像しながら過ごした準備期間はとても楽しかったですね。
──大山さんはいかがでしたか?
大山 : 正直にお伝えすると、「この事業が長野市の明るい未来にどう繋がっていくのか」ということが当初、自分の中で漠然としてよく分からず、ペルソナづくりも「何を書けばいいんだろう」と悩んだ時期がありました。
しかし、実際にヒアリングをしながらペルソナをつくり、対象となる人物像やこの先の未来が具体的に見えてくると、非常に楽しく進めることができました。
──ペルソナについても詳しくお聞かせください。
室田 : 今回のペルソナは、長野市出身者ではなく、特に長野市に縁もない人です。
「長野市ってなんだか気になる」といった気持ちでも大歓迎です。ぜひこの事業にご参加いただきながら、地元企業の経営者や地元のみなさんとのつながりを基に、長野市をだんだん好きになっていただけると嬉しいです。
大山 : 長野市のことがすでに大好きな方も、もちろん大歓迎です。
そして最も大切にしたいのは「地方の課題を解決したい」という熱い気持ちです。
ぜひ、長野市への扉を「ノック」していただければと思います。
長野市を変えていきたい、と強く。
──「NAGA KNOCK!(ナガノック!)」に込めた想いや大切にしていることをお聞かせください。
大山 : プログラム参加者のみなさんが、長野市に来てただ孤立してしまうのではなく、長野市にいる様々な人々と出会いながら、お互いに良い影響を与え合える状況が生まれるといいですね。
また、私自身も岐阜から長野に移住したという背景もあり、プログラム参加者のみなさんとは、肩書きを抜きにして関わり合えると嬉しいです。
室田 : 今回のプログラム参加者と長野市民とが今後意見を交わしていく中で、信頼関係が生まれ、お互いの理解に繋がり、そこから思いもよらない事業が生まれるといいなと思っています。
「この事業があって良かった」「この事業のおかげで私たちの生活が助かった」と双方に感じていただけるような、そんな流れができると嬉しいですね。
一つ一つの成功事例が積み重なった結果、「私の出身、長野市なんだよ、いいでしょ」ってみなさんが今以上に誇りを持てる将来にしたい──なってほしいではなくて、したい──と今まで以上に強く思っています。長野市を変えていきたいです。
井上 : 私は、長野市の戦略マネージャーとして、ある種「外の人」でもあり、役割としては「外であるからこその違う視点」を提供して、きっかけづくりをしています。
そういう意味ではやはり、このプログラムは、「長野市の将来をどうにかしよう」と思っている「中の人たち」がまず、オーラや想いを持って、色々な人たちを巻き込んでいくことが大切です。
ですので、大山さんと室田さん、お二人の今のお話を聞いて、「想いを持って、このプログラムを推進していこう」という心の声が聞こえて感動しています。この事業はとても自信が持てる事業になると思います。
長野市で起業する人々がつくるエコシステムを、次の世代へ。
──「NAGA KNOCK!(ナガノック!)」の今年度、そして今後の展望についてお伺いさせてください。
大山 : このプログラムの背景にある「長期戦略2040」や「スマートシティ」など含め、色々なことが同時期に動き始め、走り出したところです。ですので、起業を志すプログラム参加者のみなさんの思いも柔軟に取り込みやすい時期で、このプログラムだけでなく全体の方向性にも携わっていただけるいいタイミングだと思います。
また、今年このプログラムに参加してくださった人で、もしその途中で選考から外れてしまったとしても、参加者みなさんとの繋がり自体を丁寧に残していきたいと思っています。来年度以降も、もしこのプログラムが続く限り、多くの方との繋がりが続いていくと嬉しいですね。
そうやって出来上がったコミュニティを──今後は例えば、このプログラムを介さなかったとしても、「入りたい!」と言ってくださる人が出てきたりすることもイメージしながら──大切に育てていきたいと思っています。
室田 : たとえ一回失敗したとしても、その次の年も頑張れるという風に、何回でもチャレンジしていただくことは大歓迎で、成功するまで応援し続けますというスタンスでいます。長野に興味を持ってくださった人は、どんどん長野に来ていただき、起業家を目指してほしいと思います。
また今年度、このプログラムを通じて起業する人が出てきた時に、「次の年、挑戦してみたい!」「私でもできるかも!」と、先輩起業家に憧れて長野市を訪れるという循環を生み出したいです。
そして、長野市で起業する人々が、エコシステムをつくり出していって、次の世代へ、次の世代へと、ずっと繋がっていく素敵な未来を想像しています。
井上 : 長野の魅力って、「人」なんですよね。
起業はリスクがあって大変そうというイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。たしかに起業を志す方はみなさん孤独で戦っていると思います。
しかし今回は孤独ではないんです。
プログラムの最初、地元の経営者に伴走する形で、(長野市での)人間関係の入り口が用意されています。「人」の魅力ってなかなか言葉では伝わりづらく、「ぜひ一度、タッチしてみて」という気持ちがあります。
「NAGA KNOCK!(ナガノック!)」を通じて、その良さを実感していただきながら、一過性に終わらない基盤ができると思います。
そしてその先、誰でも、人生のワクワクを増やしていけると信じています。
──みなさん、本日はありがとうございました!

善光寺表参道の夜景。古き良き文化とチャレンジが共存する善光寺門前(善光寺表参道イルミネーション)《写真提供 : 長野市》

旭山から望む長野市街地。雄大な自然と都市機能が共存。《写真提供 : 長野市》

戸隠の鏡池。市街地から少し足をのばせば、このような心洗われる風景も。《写真提供 : 長野市》
【案内】長野で自分らしさにノックしよう。
以上、3名のお話はいかがでしたか。
取材を通じて、この事業に関わる長野市のみなさんがそれぞれ、個人の想いも強く込めながら、丁寧に立ち上げていらっしゃることがひしひしと伝わってきました。
新しく始まる「NAGA KNOCK!(ナガノック!)」というプログラムで、どんなワクワクする未来が切り拓かれていくのか、今から非常に楽しみです。
※本記事の掲載情報は、2021年06月現在のものです。

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