2025年10月7日〜10月9日に島根県雲南市(うんなんし)で、「ローカルリーダーズミーティング 2025」(主催:ローカルベンチャー協議会/事務局:NPO法人ETIC.)が開催されました。
ローカルリーダーズミーティングは、地域で活躍するプレイヤーや行政関係者、民間企業の担当者、地域に根ざした活動に興味を持つ個人などが全国各地から集まり、情報共有や交流、現地視察などを通じて、地域づくりのヒントを持ち帰るためのイベントです。「ローカルリーダーズミーティング 2025(以下LLM2025)」は全国各地から約230名が集い、これからの地域づくりを考えました。
そしてLLM2025終了から約1カ月後の11月。LLM2025の総まとめとして、LLM2025では雲南市での企画側であるNPO法人おっちラボの小俣健三郎さんと、参加者側のローカルベンチャー協議会参画自治体で中間支援団体として活動するお二人、事務局であるETIC.(エティック)の山内幸治と急遽座談会を開催しました。
本記事では、参加された皆さんが得た学びや、今回キーワードとして掲げた「えすこ・総働・鎮静化」とは何だったのか振り返っていきます。
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<スピーカー>
大井 健史(おおい たけふみ)さん 株式会社エーゼログループ 錦江町支社 支社長
小俣 健三郎(おまた けんざぶろう)さん NPO法人おっちラボ 代表理事
成宮 崇史(なるみや たかふみ)さん 気仙沼まち大学運営協議会 チーフコーディネーター
山内 幸治(やまうちこうじ) NPO法人ETIC. シニア・コーディネーター / Co-Founder
※記事中敬称略。登壇者のプロフィール詳細は記事最下部に記載。
鎮静化は活性化の対極にあるわけではない
山内:「えすこ・総働・鎮静化」というキーワードの中では、個人的には鎮静化が刺さっています。参加前は「地方には待ったなしの課題が多くあるなかで、鎮静化していていいのか?」という思いもありました。特に能登半島地震のような災害に見舞われた地域では、人口減少が一気に進み、田んぼも祭りも維持できないという状況がすぐ近くにあります。
そういったことも念頭に鎮静化について初日から考えていましたが、阿用地区でのフィールドワークや、里山をテーマとした分科会などに参加して、頭だけではなく身体とつながって「わかっている」ことは、迫力や意味合いが違うなと感じました。
短い時間ですが、阿用地区では祠の近くに竹が生え、見通しも風通しも悪くなってしまった場所の整備に参加したんです。外部の方も関わり、データを取りながら回復過程の観測を続けていくそうですが、1年、2年と手入れをしていけば地域全体がよくなっていく予感がありました。
ただ説明を聞くのと、実際に竹を切り、けがをしないよう注意しながら何本かまとめて滑り落とすといった作業のあとに、水源や森林の話を聞くのとでは、入ってくるものが違います。その後の里山をテーマに全国各地で活動されている皆さんの報告も、その地域にある文脈や背景が報告者の一部となっているように感じました。

僕自身も数年前に家族で香川県に移住したことで、生活者として地域コミュニティについて考えるようになってきてはいます。ですが長く暮らしてきた人たちと比べると、論理を超えたところにある、暗黙知に裏打ちされた知恵とでもいうべきものが弱いなと気付きました。
それを抜きに表面的な活性化だけやっても、おもしろくない未来にしかならないように感じます。LLM2025を通して、鎮静化とは、地域で共有され、そこに暮らす人々に内在化されたものと向き合い、大切にしていく感覚に近いと解釈しました。鎮静化は活性化の対極にあるものではなく、むしろ鎮静化した中の「何か」を大切にしない活性化は陳腐なものになってしまうのではないでしょうか。
「その土地に流れているもの」を読む力
成宮:鎮静化は、気仙沼市が掲げている「スローシティ」にも通じると思います。スローシティとは、地域に根付いた食、生活、文化や環境を大切に、豊かで持続的な住みよいまちを目指すまちづくりのあり方です。スローの定義もファストを否定するものではありませんが、やっぱりこれまでの積み重ねを大事にしながら、ゆったりと土地になじんでいく感覚なのではないでしょうか。
その土地に流れている「何か」に目を向けない活性化では、地域全体のレジリエンスも高まりません。地域の困りごとを聞いて外部の人が解決のために力を貸すという方向性もありますが、地縁のコミュニティの中に身を置いてみないと、ベクトルが一方的になってしまうので、鎮静化と活性化を両輪とした取り組みが大事だと思います。
その点で言えば、今回のLLM2025で地域自主組織の皆さんのお話を聞けたのは、過去のLLMにはなかった側面ですよね。

大井:僕は波多地区へのフィールドワークに参加しましたが、地域の方の生活者目線での話は今までのLLMでは出てこなかったので、確かにこれまでとは違ったなという感覚です。今ここにあるものを感じられて、これまでローカルベンチャーの文脈で語られてこなかった人も含めて総働していると感じられる場でした。
成宮:ローカルベンチャーという言葉はよくわからないけど、こういう風に体現しているよ、という自然体の取り組みを伺えて、あらためて地域に対するリスペクトの大切さを感じました。
山内:3日目の探究セッションで取り上げられた『「風の谷」という希望』という書籍でも、土地固有の歴史や記憶、自然を深く理解する「土地読み」の重要性が説かれていました。土地読みの力はアイデンティティやシビックプライドの形成にもつながると思いますが、そうは言ってもただ暮らしていれば身につくというものでもないですよね。
小俣:地域を深く知る人と一緒に歩く、ということが必要なのではないでしょうか。僕も鳥取県にある大山(だいせん)から雲南市の須我神社まで行き、その場の成り立ちを聞くというプログラムに参加したことがありますが、すごく探究しがいがありました。いずれ地元のベテランガイドの方とも、一緒に歩いてみたいと思います。
LLM2025で得た学びが各地でつながっていく
小俣:LLM2025を振り返って、得られた学びや自分の地域に持ち帰れそうなことなどはありますか?
成宮:シンプルですが、自分たちの土地をもっとよく知ろうと思いました。今顕在化している課題にだけ目を向けて物事に着手するというのは、危うさもあるような気がします。創業支援をしっかりやっていくといった柱はありつつ、その土地の歴史や文化、風土にちゃんと目を向けていくことが大切だとあらためて感じました。
どこまで目を向けていくかは終わりがないので、それを好きでできるか、そうではないのかで人によって動き方に差が出てくると思っています。それでも大切なことなので、属人的になりすぎない方法を模索する必要がありそうです。
それから今後につながりそうなこととしては、明確ではありませんが2つあります。1つ目は、活性化と鎮静化という両輪を見据えて組織を動かしていくということ、そして2つ目は、気仙沼市の総合計画策定に活かすということです。来年度から計画策定に向けた準備が始まりますが、雲南市の取り組みについては市長などいろいろな方とも共有していますし、総合計画策定のプロセスに影響を与えられるのではないかと思っています。

小俣:大井さんはいかがですか?
大井:僕は総働というキーワードが印象に残っています。錦江町メンバーとも「総働と掲げなくても、結果として総働したくなるようなまちをつくっていきたいね」と話していたのですが、それ自体が収穫です。そのためにも、業種や立場を超えた対話の場をつくっていきたいと思いました。
同業者や似た属性の人で集まる機会はあっても、ほかのフィールドとなるとよく知らないし、共通言語がなくて何から話したらいいかわからないことも多いのではないでしょうか。そこで、まずは異業種の人が集い、お互いのやってみたいことを話してみるような場づくりを、錦江町でもやり始めました。こうした場をきっかけに、結果として総働になっていくといいなと思います。
総働とは、積み重なった市民力の結果である
山内:総働について自分の地域で考えてみると、もっとできることがあるように思います。総働ってすごく構えた話ではなくて、暮らしの延長線上で「あったらいいな」と思うことを形にするなかで生まれてくるものなのではないでしょうか。
例えばうちの息子は生き物が好きなんですが、わざわざ県をまたいで岡山県西粟倉村のビオ田んぼクラブの活動に参加しています。「こういうことをやってみたい」と素朴に発信できて、仲間が出てくれば自分たちの地域でもやってみようかとなりそうですし、総働の舞台はすでに暮らしの中にあるような気がします。
大井:住民目線ではそうですよね。一方で、行政として総働という言葉を使うのはすごく勇気がいることだとも感じます。それをやりたい人とそうではない人との分断が生まれるかもしれません。
小俣:そうですね。総働は行政が住民に対してスローガン的に掲げる言葉ではなくて、行政関係者自身に向けて、住民一人ひとりや自然や文化の存在に敬意を払うことを促す言葉です。「すでに、いつでも、誰であっても、その存在自体がまちの活力になっているんだ」、「それぞれが日々の活動を積み重ねた結果、総働が起こっているんだ」と捉えることで、無用な界隈化を招く線引きがなくなりますし、我々中間支援団体の行動も変わると思います。

成宮:チャレンジという言葉も一緒ですね。ちょっとした困りごとが解決したり、自分の生活がよくなるというのはみんなが願っていることだし、暮らしが豊かになる連鎖は歓迎すべきものだけど、誰しもがチャレンジしなければいけないかのような雰囲気だと窮屈になる。
具体的なプロセスが見えているわけではありませんが、見えやすいものと見えにくいものがあるなかで、見えにくいものに関わりをもとうとする丁寧さが、総働につながっていくのではないでしょうか。
小俣:常に総働は起こっていると考えてみると、自分たちに見えている輪の中に他の人を呼び込もうというのではなく、日々まちを生きている人それぞれがよりよくつながって足りないところを補い合えるように、コミュニケーション機会をたくさんつくるというアプローチが重要になります。
住民全員を追うことはできないので、中間支援としてどう動いていくかは難しいところですが……。
大井:そこに暮らしているだけで総働なんだという前提は大事ですよね。総働しているかどうかという基準で見ると、線引きや分かり合えない部分がでてきてしまうと思います。総働の仕方や価値基準に違いはあれど、まずは「それぞれの持ち場で総働しているんだ」というリスペクトをもつことが出発点ですね。
錦江町の場合、地域内にチャレンジしている事業者の方も一定数いるため、外から地域をかき混ぜてくれるようなプレイヤーがどんどん来て変えていくというやり方はなじまないように感じています。そんななか、今回のLLM2025では総働といういいキーワードをいただくことができました。
新田町長も常々「小さな幸せを積み重ねられる地域にしたい」と口にしていますが、地域の中にあるさまざまな願いを起点に、引き続き地域に根ざした活動ができたらと思います。

<登壇者プロフィール詳細>
大井 健史(おおい たけふみ)さん
株式会社エーゼログループ錦江町支社 支社長
北海道札幌市出身。株式会社リクルートで求⼈広告の新規営業に従事した後、株式会社エーゼログループに入社。岡山県西粟倉村にて移住・起業支援プログラムの企画運営等を経験。2023年4月に鹿児島県錦江町に移住し「町内に挑戦と応援の文化を育む」ことをミッションとする錦江町役場との事業をスタート。移住・起業支援や町内事業者の情報発信、事業創出支援等に幅広く関わる。
小俣 健三郎(おまた けんざぶろう)さん
NPO法人おっちラボ 代表理事
1981年東京都生まれ。学生時代は学生NPOに所属し、国際インターンシップや国際会議などを運営。法科大学院卒業後、主に企業法務を扱う弁護士として約4年半経験を積む。2015年6月におっちラボに参画し、地域でチャレンジする人をサポートする幸雲南塾の運営するなど、雲南と他の都市・地域をつなぎ、若者の起業や地域プロジェクトを伴走支援。2018年から代表理事を務め、コミュニティ財団設立や、エネルギー自治、里山の生物多様性改善などのプロジェクトに取り組んでいる。
成宮 崇史(なるみや たかふみ)さん
気仙沼まち大学運営協議会 チーフコーディネーター
立教大学コミュニティ福祉学部卒業。卒業後、児童養護施設や飲食店での勤務を経て、東日本大震災の復興支援のため、2011年8月に東京から気仙沼へ。その後気仙沼に残ることを決意し、仲間と共に2011年10月に任意団体NPO底上げを立ち上げ、2012年5月にNPO法人化。理事・事務局長を務める。現在は、中高生の探究的な学びのサポートやマイプロジェクトの推進、学びや対話の場づくりを通して世代問わず全ての市民がチャレンジし、応援し合う町の機運の醸成を行なっている。
山内 幸治(やまうちこうじ)
NPO法人ETIC. シニア・コーディネーター / Co-Founder
1997年、大学在学中に創業メンバーとしてETIC.の事業化に参画。国内初の実践型インターンシップの事業化や、その仕組みの地域展開に取り組む。2000年NPO法人化とともに事業統括ディレクターに就任。その後、社会起業家の育成を行うアクセラレーションプログラムや先進10自治体と連携したローカルベンチャー協議会の設立など、各省庁、大手企業、ベンチャー企業、地方自治体等と連携して、社会や地域課題に取り組む担い手を育む環境整備を進めている。2021年に自主経営型組織への転換を目指し、理事および事業統括ディレクターを退任し、現在に至る。立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科非常勤講師や、NPO法人カタリバ理事、NPO法人JANIC理事、環境省「地域循環共生圏づくりプラットフォーム事業」アドバイザー、科学技術振興機構「SDGsの達成に向けた共創的研究開発プログラム(SOLVE for SDGs)」アドバイザーなどを務める。
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