
エティックは、2025年3月10日、「社会起業塾イニシアティブ」2024年度の最終報告会を都内で開催しました。今年度の卒業生は計8名。当日は、大勢の関係者やオンライン参加者約160名を前に、それぞれ半年間の成果報告と新しい事業について披露されました。
今記事では、北橋玲実さんのプレゼン内容と各メンターからのコメントをご紹介します。
「選曲支援」によるメンタルケアsoundefine(サウンディファイン)

- 分野
福祉・保健・医療
- 事業内容
社会の情報過多や比較競争の中で、自分をケアする選択を知らない・持たない人々へ、身近な音楽を通じてほかならぬその人自身と向き合う機会を提供。トレンドや数値による音楽の評価ではなく、学術知見や聴取歴に基づいて一人ひとりが今必要とする音楽を確実に届けることによるケアを目指している。将来的には、同じ感性を持つ人との深いつながりを創出することを通じて、メンタルケアサービスとして健康問題を解決することを超えて、一人ひとりが本来の自分やその価値を大切にしながら、他者とのつながり・共創による新たな可能性に支えられた、人のこころと経済が共に育まれる社会を目指す。
- 活動地域
東京都
必要なタイミングで自分に必要な音楽にたどり着いているか
私はこれまでに音楽に助けられた経験があります。以前と比べると、メンタルケアは広く普及されているのを感じますが、抵抗感を持つ層もまだ少なくなく、ケアをしたくても心身が疲弊状態にある場合は継続が難しくなる、または画一的なプログラムが多くなるという課題が、メンタルヘルス業界では解決が急がれています。一方で、音楽は人々の生活に身近にあって、あるデータでは、「人は平均で1週間に18時間、音楽に触れている」ことも示しています。音楽療法という手法もあるほど、心には良いものだと認識されている人も多いと思います。
ただ、実際は、近年の音楽サービスや音楽の位置づけも変化し、その音楽が聞く人にどれだけこころへのインパクトをもたらしているのか、音楽の本来持っている価値が一般の人には見えづらいのではないか、と疑問を持ちました。また、私たちが自分にとって本当に必要な音楽に、必要なタイミングでたどり着けないのではないかとも思い、社会起業塾の期間中に市場調査アンケートを行いました。
アンケートではまず、既存の音楽プラットフォームでの曲選びについて質問を出しました。そうすると、多くの人が自分自身が抱えている心身の状態と相性の良い曲、回復させてくれるような音楽と出会うことをとても難しく感じていることが分かりました。
もう一つ、メンタルケアという認識について、ストレスケアに関心があっても習慣にはつながっていない人が多いことも分かりました。

現在、開発中のサービス「soundefine(サウンディファイン)」は、精神的な不調を感じたときに音楽に助けてもらう、その仕組みを作ることに可能性を感じて取り組みを始めました。気持ちに余裕がないとき、辛いときに、音楽に助けられる仕組みがあることに新しい価値を感じたのです。
特徴として、メンタルケアの必要性が高い人に今必要な音楽を質の高い音のデータ、また、アルゴリズムにもとづいて提供します。
私自身、「soundefine」によって、自分の状況や状態に合った音楽で気持ちを整えられることで、自分の長所や価値を認識できる機会につながっていると感じています。今後、「soundefine」を社会的なインフラにすることも目指して事業を推進していきます。
また、社会起業塾では、自分自身、他人の協力を得ることへの抵抗が少なくなったことなど成長を感じています。卒業後、手を差し伸べてくれる人に出会えるようになったことは、自分にとっても大きな出来事となりました。
企業や大学機関とも連携し実証実験を重ねる
<メンター : 竹内氏のコメント>
NECさんとの素晴らしい協働もあり、まさに社会起業塾にぴったりの挑戦になりましたね。大学など研究機関とも連携して効果検証を進めているところも他にはない強みになると思います。半年間見てきて、私の思う北橋さんの印象は「優しい天才」。実は作曲もするしアプリも自分で作っちゃったりするんですよね。そして、実はすごく人なつこくてマイペース。そんなところですよね。その長所をこれからもぜひ大事にして進んでいってほしいです。
日々当たり前に聞く音楽が、言葉にならないしんどさを、言葉じゃない方法で軽くしてくれるって、本当に素晴らしいことだと思うから、そういう優しい世の中にしたいという想いだけは、自分の使命としてブラさずに、ぜひ息長く続けていってください。
見ないフリを“しない”ことで社会に新しい選択肢を
<メンター:土屋氏のコメント>
北橋さんの話を聞きながら、「仕事帰りに、すごく複雑な思いを持ちながら電車に乗る人ってどれだけ多いのだろう」と気づかされました。電車のなかで、耳にイヤホンを付けている人たちは、音楽を聴いているのか、辛い現実から逃げているのか、実際はそれぞれの暮らしの中で、自分自身と向き合っている時間になっているなど、いろんな方々がいらっしゃると思います。

傷ついた人であれば、周囲の人たちが見ないフリをしてきたことを見続けるためには、皆と一緒ではない方がいいとも思います。社会で傷ついている人、実は自分が傷ついていると当事者として気づいていない人、気が付かないふりをすることで自分を守っている人。そこに気づいた北橋さんだからこそ、自分の感覚を大切に、自分が信じる道を進んでほしい。ほかの人ができない事業を始めていると思います。いま、北橋さんが取り組んでいることは、社会に新しい選択肢を作っていることを意識して、進んでいってほしい。これからも期待しています。
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